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「おてんとさまが見てるよ」
「おてんとさまが見てるよ」
そんな母の台詞が脳裏に浮かべば、わるいことはよそう、と踏みとどまれるものだった。
誰かのお菓子をこっそり食べるとか、親の財布から少しねこばばするとか、道端にゴミをすてるとか。そうした類の悪事には極力手を染めない、そんな子どもだった気がする。目の前に誰もいなくたって、おてんとさまが見ているんだから。
しかしここ最近、おてんとさまの守備範囲がずいぶんと手広くなり、ついには日陰の果てまで行き渡ってしまったように感じている。ゴミはゴミ箱へ、だけじゃヨ