74 CDとレコードと、曽我部恵一の音楽
見出し画像

74 CDとレコードと、曽我部恵一の音楽

本記事は、前項「73 音楽と流通〜変わり続けるポップ・ミュージック」の内容を踏まえ、ミュージシャン曽我部恵一氏に行なったインタビューである。1971年生まれの曽我部氏はCD全盛期にあたる1994年にロックバンド「サニーデイ・サービス」でメジャーデビューし、その後自らレーベルを立ち上げるなど、まさにレコード産業の浮き沈みや記録媒体の変遷を目の当たりにしてきた第一人者だ。“流通方法の変化”が、どのように音楽に変化をもたらしたのか。そして変わらないものは何なのか。曽我部氏の言葉とともに探りたい。


10代で経験した強制的な「CD移行」で、レコード産業に対して不信感が芽生えた

── 曽我部さんが最初に触れた音楽媒体は何でしたか?

曽我部:音楽に触れるきっかけになったのはテレビとラジオですが、買ったのはレコードとカセットテープです。中学生にとってレコードは高いので、できるだけカセットテープでラジオのエアチェックをしていましたね。その次に貸しレコード屋さんでレンタルして、成長するにつれレコードを買っていくという順番でした。

── レコードからCDへの移行をどのように捉えていましたか?

曽我部:悲しかったのと同時に、恨みが凄かったですね。1988年頃、CDでしか発売されない作品が増えてきたんですよ。当時はCD移行の大キャンペーンが展開されていて、「レコード針の生産が終了する」という新聞記事を読んだ父親に「レコードがもう聴けなくなるらしいぞ」と聞かされ、めちゃくちゃショックでした。中学生から高校3年生までなけなしのお金で集めてきたレコードが、こうも簡単に文化として終わってしまうのかと。

── 恨みというのは?

曽我部:レコード産業に対する恨みです。親会社のオーディオ部門でCDプレイヤーを売りたいからといって、これまで売ってきたレコードをすぐに見放すのかと。子どもだったのもあって「文化って全然大事にされてないんだな」と、もの凄い不信感を覚えました。その後ミュージシャンとしてデビューして、実際に自分がレコード産業のなかで働きはじめたわけですけど、業界の仕組みがちゃんとわかってきても、高3のときに勘で捉えたものは間違っていなかったと思いました。そこからアンダーグラウンドな方向にいってしまったんですよね(笑)。そっちのほうが音楽に対する愛があるから。

── その後、消極的な気持ちでCDプレイヤーを購入されたのでしょうか?

曽我部:高3のときに、CDでしか出ていないアルバムを聴くためにちっちゃいCDコンポを買いましたね。でも、レコードで手に入る作品はレコードで買うようにしていました。

── 当初CDに悪い印象を持っていたとのことですが、実際に聴くようになって印象は変わりましたか?

曽我部:悪印象というのはシステムやレコード産業のやり方に対するものなので、ものとしてのCDは別に憎くはないんですよ。結局CDもたくさん買っていましたし。

── では、ものとしてのCDについてよいと感じた点は?

曽我部:ないです(笑)。やっぱりレコードのほうが好きだし、いまでもCDとレコードが並んでいたらレコードを買いますね。

CD全盛期にメジャーデビュー。しかし2000年頃から異変が訪れた

── サニーデイ・サービスとしてメジャーデビューした頃はCD全盛期でしたよね。

曽我部:当時はCDしか出さないのがあたりまえの時代だったので、ファーストアルバムはCDでつくりました。でもレーベルに対して「レコードを出したい」とずっと言ってたんですよ。そうしたら、セカンドアルバム『東京』がレコード会社の予想より売れたから、ボーナス的な感じでレコードで出してくれたんです。初めて自分たちのLPが世に出て、あれはめちゃくちゃ嬉しかったですね。

── CDとレコードでは1枚当たりの収録時間が2倍近く違いますよね。レコード好きとして、当時制作されるアルバムの長さについて意識していましたか?

曽我部:まったく意識していなかったですね。当時は完全にCD文化だったので、CDでリリースするのを前提とした16〜17曲入りで50〜60分くらいのアルバムが普通でした。僕らもその時代のバンドだったから、そういう長いアルバムをあたりまえのものと感じてたんです。いま振り返ると、「あの頃のアルバムは長かったな」と手に取るようにわかりますが、当時はアルバムの尺がレコード時代より長くなってるという意識もありませんでした。逆に、いまはレコードをつくるのが前提として制作しているので、「片面20分くらいに収めたいな」と思ってつくっていますけど。

── 山下達郎さんはレコードからCDに時代が移行した際や、レコーディングがアナログからデジタルになった際など、音づくりのためにたくさんの工夫をされてきたことで有名です。曽我部さんにはそうした音楽記録媒体の変化に伴うターニングポイントはありましたか?

この続きをみるには

この続き: 6,169文字
この記事が含まれているマガジンを購入する
1記事あたり300円なので10記事以上ご覧になる方はマガジンを購入するとお得です。また、紙の雑誌もAmazonおよび全国の書店で引き続き販売しています。

2021年2月16日に発行された雑誌『広告』流通特集号(Vol.415)。そのすべての記事を4月16日より順次公開していきます。各記事とも…

または、記事単体で購入する

74 CDとレコードと、曽我部恵一の音楽

雑誌『広告』

300円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
雑誌『広告』

最後までお読みいただきありがとうございます。Twitterにて最新情報つぶやいてます。雑誌『広告』@kohkoku_jp

吉 「風に順いて呼ぶ」
いいものをつくる、とは何か? https://kohkoku.jp