『広告』最新号、発売。特集は「流通」。 〜 250種類の表紙で、すべての流通経路を可視化。
こんにちは、『広告』編集長の小野です。
本日、『広告』の最新号が発売になりました。前号の発売は昨年の3月。かなり時間が経ってしまいましたが、ようやく発売です。
最新号の紹介をするまえに、少しだけ時間がかかってしまった経緯をお話しさせてください。そんな内部の事情よりも最新号の内容を知りたいという方は、読み飛ばして本題からご覧ください。
当初の予定では、すでに編集長を卒業しているはずでした
『広告』の編集長をやらないかと打診されたのは、いまから2年前、2018年の6月でした。当時の『広告』は3カ月に一度刊行されるいわゆる季刊誌で、編集長の任期は2年で、8冊出したら卒業といった慣例がありました。そのため、当初の予定では2019年の3月に1号目を、2020年の12月に8号目を出して、現時点ではすでに編集長を卒業しているはずでした(そして博報堂も卒業しちゃおうという腹づもりでした)。
でも、実際に1号目が出たのは2019年の7月、2号目はそこから8カ月後の2020年の3月でした。長年続いた慣例は完全に崩れ去り、今号にいたっては、前号から11カ月。ほぼ1年……。
「時間かかりすぎじゃない!?」
そうですよね……。でも、時間がかかる理由が、いくつかあるので聞いてください。
ひとつは、編集長の業務とは別の仕事もしているため、雑誌制作に割ける時間が限られてしまうという点です。令和らしい働き方で、関係者や僕自身にとって、できるかぎり無理のないように進行をすると、どうしても時間がかかってしまいます。
また、ほぼすべての記事の企画や編集に僕自身が深く関与していることも理由のひとつです。『広告』は「いいものをつくる、とは何か?」を全体テーマに、つくり手としての自分自身に欠けている社会的な視点や文化的な視点に出会い学びたいという動機でつくっている側面があります。企画のための調査や専門家との対話、インタビューなど、記事制作の過程こそ学びの宝庫であり、たとえ時間がかかっても、ひとつひとつの記事にじっくり向き合いたいという思いがあるのです。
そして、特に今号に関しては新型コロナウィルスが大きな要因でした。コロナ禍によって様々な領域でこれまでのあたりまえが崩れはじめ、今号の特集である「流通」もその激流に飲み込まれました。先行きが見えない状況のなか、何が一時的な変化で何が根源的な変化なのかを見極めるため立ち止まざるを得ませんでした。
しかし、時間がたっても一向に先行きは見えてこない。そろそろ動かないとまずい。そう思って制作を再開したのは7月でした。ただ、その時点では、できれば11月、遅くとも12月中には発売しようと考えていました。
そんななか、最後に立ちはだかったのは今号の装丁でした。どんな装丁かは本題の部分で紹介しますが、装丁の方向性が決まってから仕様が固まるまで丸2カ月、そして印刷・製本に2カ月以上かかってしまったのです。
こうして、(まだ3号しか出していませんが)これまでで最長の制作期間となったのです。ちなみに、制作費もこれまでの3号のなかで最大です。いや、1年に4冊出していたころとほぼ同じ年間予算を1冊に注ぎ込んで制作しているので、おそらく70年以上ある『広告』の歴史のなかで一番制作費がかかっているのでは……。
ともかく、2020年をまるっと捧げて“一冊入魂”でつくりあげた『広告』最新号が、本日2月16日発売になります!
ここから本題です
さて、前置きが長くなってしまいましたが、『広告』最新号では、全体テーマである「いいものをつくる、とは何か?」を思索する第3弾として「流通」を特集します。
新しい技術やビジネスモデル、そしてコロナ禍によって「流通」のあり方が様変わりしています。いま、商品や作品がつくり手のもとを離れてから受け手に届くまで、いったい何が起きているのか。物理的な商品から映画や音楽などのコンテンツまで、「流通」にまつわる様々な視点を集めました。
本号の装丁は、独自に開発した「段ボール装」です。側面のミシン目を剥がすと、そのまま雑誌になります。
さらに、本誌が製本されてから読者の手元に届くまでのすべての流通経路を、書店や取次、運送会社などを記載した全250種類の表紙によって可視化しました。書店や入手方法の数だけ異なる表紙の『広告』流通特集号が存在します。
これは、「より早く」「より安く」を追求し、時間とコストを“ゼロ”に近づけようとする現代の「流通」に対する問題提起です。この装丁をとおして商品が手元に届くまでの人の営みやものと流通の関係に目を向けるきっかけとなれば幸いです。
各書店の表紙は『広告』ウェブサイトからご覧いただけます。
https://kohkoku.jp
また、なぜ今回「流通」を特集したか、「流通」についてつくり手としてどんな問題意識を持っているかを巻頭メッセージに書いています。ひとあし先に全文公開していますので、ぜひご覧ください。
https://note.kohkoku.jp/n/nd51eeaa5a989
流通特集号は、折り返し地点
2018年の6月に編集長を引き受けてから2年半、ようやく3号目を出すことができました。
「いつまで編集長を続けるの?」
たまにそんなことを聞かれたりもするのですが、1号目を出した時点で、何号出すかとすべての特集を決めていました。
特集についてはまだ伏せておきますが、首を切られない限りはあと2号出すつもりです。全部で5号。だから3号目となる今号は折り返し地点です。おそらく、次号も最終号も時間がかかるかと思うので、2022年の夏か秋頃の卒業を目指したいと思います。
あわよくば博報堂も卒業したい……。なんて書いたら怒られそうなので、ここら辺でやめておきます。
ということで、残りの2号を全身全霊でやり切るために、みなさまにお願いがあります。
ぜひ、今回の『広告』最新号についての意見や感想を聞かせてください。みなさまからのフィードバックを、現在企画を進めている次号の制作に積極的に取り入れていきたいと考えています。はげましのご感想から辛辣なご意見まで、どんな内容でもしっかりと受け止めさせていただきます。
読者アンケート:こちらからお願いします
メール:kohkoku@hakuhodo.co.jp
また、これまでは特に特典など用意していませんでしたが、アンケートにご回答いただいた方のなかから抽選で30名の方にAmazonギフト券(Eメールタイプ) 3,000円分または「広告 Vol.415 特集:流通」1冊を進呈します。
ご協力よろしくお願いします!
『広告』編集長 小野 直紀
広告 Vol.415 特集:流通 <目次>
流通(こちらで無料公開中)
54 流通と社会
経営学者 石井淳蔵 × 『広告』編集長 小野直紀
55 近代合理主義と流通
マックス・ウェーバーをとおして見る「合理化」の正体
56 「簡単に手に入る」流通が見落としているもの
57 輸送進化論
世界は輸送でできている
58 物流空間試考
59 段ボールから考える、梱包のクリエイティビティ
60 アマゾンがなくなる日
61 アフターデジタルとD2C
これからの流通が向かう先
62 中国ライブコマースの体験的考察
63 「売る」というエンターテインメント
64 小売×データの課題と未来
65 プライベートブランドの光と闇
66 「あたりまえの日常を止めない」
進化し続ける卸売業
67 グローバル流通の苦難と挑戦
68 世界的ラグジュアリーブランドのなりたちと展望
エルメス前副社長 齋藤峰明 インタビュー
69 「韓流ブーム」から「アジアで独り勝ち」へ
韓国ポップカルチャーを加速させた新しいシステムと新しい流通
70 「映画」コンテンツ流通の100年史
71 映画って何ですか?
72 メディアに対する映画監督の目線
ニコラス・W・レフン、岩井俊二 インタビュー
73 音楽と流通
変わり続けるポップミュージック
74 CDとレコードと、曽我部恵一の音楽
75 流通の変化は、漫画をどう変えるか
76 「よい本」が生まれる環境を、出版流通から考える
77 「ことば」と流通
劇作家・小説家 本谷有希子 インタビュー
78 アップルの流通戦略
どん底から世界一、そしてその先へ
79 サーキュラーエコノミーの理想論の先にあるもの
80 「おてんとさまが見てるよ」
81 思想のある小さな小売店に見る、一歩先の未来
ドワネル 築地雅人 × わざわざ 平田はる香
82 てのひらのなかの流通
83 タンザニアの商人とオルタナティブな経済
文化人類学者 小川さやか インタビュー
『広告』最新号の発売記念展示、開催中
2019年のリニューアル創刊から3号目となる「広告 Vol.415 特集:流通」の発売を記念して、東京・表参道の山陽堂書店2階ギャラリーにて発売記念展示を開催しています。リニューアル以降の『広告』に込めた思いや制作の裏側を紹介します。
「広告 Vol.415 特集:流通」発売記念展示
[会場]山陽堂書店 2階ギャラリー(東京都港区北青山3-5-22)
[会期]2021年2月16日(火)~27日(土)
[開廊時間]平日11:00〜18:00、土曜11:00〜17:00、日・祝は休廊(※開廊時間は変更となる場合があります。事前に山陽堂書店ウェブサイト・Twitterでご確認ください。)
[入場料]無料
『広告』最新号発売記念トークイベント開催
<オンライントークイベント第1弾>
リテールフューチャリスト 最所あさみ × 経済学者 大垣昌夫 × 『広告』編集長 小野直紀
〜 小売業界が持つべき倫理観とは
「成長」を目的とする企業活動への疑問と議論が活発になる昨今、「売る」ことを第一優先とする小売のあり方はどう変わっていくべきなのか。「小売の公共性」という視点を踏まえながら、これからの小売業界が持つべき倫理観について語り合います。
[日時]2021年2月26日(金)20:00〜21:30
[主催]青山ブックセンター(WEB会議ツール「Zoom」を使用してライブ配信)
[参加料金]①配信のみ:¥1,430(税込) ②配信+「広告 Vol.415」:¥4,430(税込・送料込)
[お申し込み] http://www.aoyamabc.jp/event/kouri-415/
<オンライントークイベント第2弾>
ビジネスデザイナー 江原理恵 ×
Takramディレクター 佐々木康裕 ×
わざわざ代表 平田はる香
〜 世界観を共有するコミュニティコマースの可能性
思想やライフスタイル、日々の感情を、SNSなどをとおして発信する人たちが情報や商品のキュレーターとなり、その価値観・世界観のもとに形成されるコミュニティに届ける。そうした「コミュニティコマース」の実態と可能性を紐解きます
[日時]3月2日(火)17:30~19:00
[主催]博報堂『広告』編集部(動画共有サイト「Vimeo」を使用してライブ配信)
[料金]無料
[お申し込み]https://peatix.com/event/1822698/
<オンライントークイベント第3弾>
映画・音楽ジャーナリスト 宇野維正 × ビートインク宣伝担当 白川雅士 × 編集者/ライター 照沼健太
〜 激動の音楽業界をとおして見るコンテンツ流通の未来
ストリーミングの隆盛、ライブ回帰などによってビジネスモデルが様変わりした音楽業界。コロナ禍によって再び変化を余儀なくされているいま、「炭鉱のカナリア」とも呼ばれる音楽業界の動向を深掘り、音楽・映画をはじめとするコンテンツ流通の未来について議論を交わします。
[日時]2021年3月3日(水)20:00〜22:00
[主催]本屋 B&B(WEB会議ツール「Zoom」を使用してライブ配信)
[参加料金]①配信のみ:¥1,650yen(税込) ②配信+「広告 Vol.415」:¥5,170(税込・送料込)
[お申し込み]http://bookandbeer.com/event/20210303_music/
<オンライントークイベント第4弾>
IT批評家 尾原和啓 × 情報法制研究者 加藤尚徳 × デジタルシフトウェーブ代表 鈴木康弘
〜 ECプラットフォーマーの社会的責任
欠陥商品やフェイクレビュー、返品廃棄などの問題を抱えるECプラットフォームが、メーカー、生活者、社会にとってよりよいプラットフォームへと進化していくために必要な自浄作用や行政・立法への働きかけなどついて議論します。
[日時]3月5日(金)20:00〜21:30
[主催]SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(WEB会議ツール「Zoom」を使用してライブ配信)
[参加料金]①配信のみ:¥1,650(税込) ②配信+「広告 Vol.415」:¥5,000(税込・送料込)
[お申し込み]https://www.shibuyabooks.co.jp/event/7227/