江戸時代から続くエンターテイメントブックストア「八文字屋」
編集部員の全国書店開拓ノート29
販路開拓のために編集部員が訪れた全国の書店。直接お会いしてわかった店主のみなさまの本に対する思いやご当地の魅力を綴ります。
八文字屋 @山形県山形市
“いつも新しい発見がある本屋です”がキャッチコピーの八文字屋さんは、山形駅からバスで5分ほどの商店街の一角にあります。
最初に八文字屋さんのことを知ったのは、ある書店員さんのインタビュー記事。山形県出身のその方の、とても思い入れのある書店として紹介されていました。
リニューアル創刊号は山形県での取り扱い書店がなかったので、著作特集号では地元の人にも愛されている八文字屋さんにぜひ取り扱っていただきたいと思いメールをお送りしました。詳細をお伝えするためお電話をすると、商品部の鳥谷部さんがていねいにお話を聞いてくださり、責任者である梅津さんに『広告』をご案内できることになりました。
訪問当日、商談の前にまずは書店を覗きに。ドアを開けようとすると、押し板に目を奪われました。花と女の子が彫られている板はたくさんの人がドアを開けたことがよくわかります。なんて美しいすり減り方!(後日、八文字屋の専務さんから、これらは西村忠さんという山形出身の金工芸家の作品であると教えていただきました)
なかに入ると高い天井には大きな提灯が吊るされ、大きな木の看板に電話ボックス。ま、まるで劇場やないか! 本のラインナップに感動することはよくあるのですが、内装にこれほど感動した書店さんはいままでありませんでした。2階には来店した人が自由に使える多目的ルームもあり、学生さんが熱心に勉強をしています。書店のなかにこういうスペースがあるのは珍しいなあ。
商談の時間が近づいてきたので、書店から歩いてすぐの八文字屋書店本部があるビルへと向かいました。本部の入り口の看板には「本ブ」の文字が…! こんな細かいところまで楽しませてくれるなんて、くらくらします。
この日は商品部責任者の梅津さん、鹿野さんにお話を聞いていただきました。新しいことに取り組んでみたいし、掛け率100:0という条件なら負担がなくチャレンジがしやすい、と取り扱いを決めていただきました。
商談前にお店に寄って店内のつくりに感動した話をすると、梅津さんは八文字屋さんの歴史についてお話ししてくださいました。もともと創業者は山形特産の紅花を扱う商人で、あとを継いだ2代目が、上方で人気だった浮世草子を山形県に持ち帰った際に多くの人に楽しんでもらおうと貸本業を始めたのが、書店としてスタートするきっかけだったそう。
「あの大きな提灯には当時の関係者の名前が書かれていて、いまはもう廃業してしまった出版社の名前もいくつかあるんです。みんながお金を出し合ってつくった思いが込もったものなんですよ」と下から眺めているだけではわからないエピソードも教えていただきました。
八文字屋さんのHPにある「かわら版」コーナーでは、最新の売れ筋ランキング、おすすめ本などが毎週更新されています。そのほか、新聞に掲載された書籍がすぐにわかるページや、山形県出身・在住の作家さんの一覧ページなど、キャッチコピーである“いつも新しい発見がある本屋です”を、WEBでも感じることができます。
ちなみに先日ご紹介した本屋イトマイさんの店主・鈴木さんは、山形県のご出身。学生時代はよくこちらに通われていたそうです。
八文字屋 探訪メモ
さくらんぼ漬け
実はトルコ周辺が原産のさくらんぼ。日本での生産量は山形県が全体の7割以上を占めると言われています。さくらんぼ食べたい! と思ったものの季節ではなかったので「さくらんぼ漬け」を試してみることに。食感は缶詰のさくらんぼに似ていて、味はシソの風味で梅干しより少し控えめの酸味。お土産用などとして新しく開発されたものだと思っていたのですが、30年以上前から梅干しの代わりとして家庭で食べられていたのだとか。
文:『広告』編集部・大塚
八文字屋
1695年(元禄8年)に創業。現在は山形県、宮城県に10店舗を展開しています。文具の展開もあり、山形県鶴岡市の「加茂水族館」のくらげをイメージした万年筆インク「くらげアクアリウム」は、八文字屋さん初のオリジナルインク。ちなみに加茂水族館は50種類以上のくらげを展示しているのだとか。淡くやさしいブルーのカラーは昨年開催された「文具女子博」でも大人気だったそうです。
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