68 世界的ラグジュアリーブランドのなりたちと展望 〜 エルメス前副社長 齋藤峰明 インタビュー
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68 世界的ラグジュアリーブランドのなりたちと展望 〜 エルメス前副社長 齋藤峰明 インタビュー

苦境が叫ばれるファッション業界のなかで、唯一成長を続けてきた分野がラグジュアリー市場である。その市場規模は2019年には150兆円に達し、中国の経済成長を受けて毎年その規模を拡大してきた。新型コロナウイルスの影響で2020年4〜6月の期間には大打撃を受けたものの、店舗の営業再開とともに売上も復調の兆しを見せ、どのブランドも「ニューノーマル」な販売方法を探っている。

ラグジュアリーブランドのほとんどはヨーロッパ圏のみならずアジア、北米、中南米からアフリカにいたるまで世界中のあらゆる地域に店舗を構えている。地域ごとの特性にあわせながらも世界共通のブランドイメージを維持するためのマーケティングはもちろん、世界規模であるがゆえに複雑化する、生産から販売までの膨大な流通過程にも向き合わなければならない。

異なる文化圏に進出して苦戦するブランドも多いなか、ラグジュアリーブランドはなぜ商品を世界中に流通させ、いまだに市場規模を拡大し続けていられるのか。「エルメス」フランス本社前副社長の齋藤峰明氏の見解をもとに、世界に通用するブランドのあり方をひも解いていく。


「ラグジュアリー」の大衆化

2017年、ルイ・ヴィトンとシュプリームのコラボが一大ブームを巻き起こした。ラグジュアリー×ストリートの潮流がピークを迎えたタイミングでのコラボは若者を中心に人気を博し、東京・南青山のポップアップストアには8,000人以上が行列したほどだ。

ラグジュアリー×ストリートの潮流は、2011年頃から始まっていた。「ルイ・ヴィトン」のメンズ・デザイナーにキム・ジョーンズが、「ケンゾー」に「オープニングセレモニー」のふたり組が就任。2015年には「グッチ」のクリエイティブディレクターにアレッサンドロ・ミケーレ、「バレンシアガ」には「ヴェトモン」のデムナ・ヴァザリアなどストリートカルチャーに親和性の高いデザイナーがラグジュアリーブランドのデザイナーに就任していった。カニエ・ウエストの作品やファッションのクリエイティブディレクターを務めていたヴァージル・アブローが手がける「オフ‐ホワイト」は2016年頃から注目を集め、2018年にキム・ジョーンズのあとを継いで「ルイ・ヴィトン」メンズのデザイナーに就任している。

ストリート×ラグジュアリーのアイテムが爆発的な人気を博した背景には、ストリート系ファッションの代名詞であるラッパーの存在や、インスタグラマーという新たなセレブリティの出現がある。ファッションリーダーとなった彼らが、ラグジュアリーブランドのアイテムをストリートスタイルに仕上げて発信することで、ラグジュアリーブランドのスニーカーやキャップ、Tシャツが飛ぶように売れはじめた。こうしたカジュアルアイテムは、いまやラグジュアリーブランドにとって売れ筋商品になりつつある。

ストリートブランドのみならず、ファストファッションブランドとラグジュアリーブランドのコラボも発生しはじめた。2004年には、「H&M」が当時「シャネル」や「フェンディ」のデザイナーを務めていた大御所、カール・ラガーフェルドとのコラボレーションを発表。その後「ステラマッカートニー」「ランバン」「ヴェルサーチ」「バルマン」と、名だたるブランドと次々に協業し、ラグジュアリーブランドの大衆化に寄与した。

2020年11月、日本各地で混乱を巻き起こすほど注目を浴びたユニクロとジル・サンダーとのコラボ「+J」は、2009年にパリ旗艦店オープンの目玉として先行販売された当時も、世界で大きな話題を呼んだ。ジル・サンダーとのコラボからユニクロはラグジュアリーブランドのデザイナーとの協業を増やしていく。代表的なコラボレーションは元「エルメス」のレディースのアーティスティックディレクターであったクリストフ・ルメールとのコラボライン「ユニクロU」だ。ユニクロの理念や文化に共感したルメール氏は、一時的なコラボにとどまらずユニクロがパリに本拠地を置くR&Dセンターのアーティスティックディレクターに就任し、現在も活躍している。

このように、2000〜2010年代はラグジュアリーブランドがストリートブランドやファストファッションを通じた新たな世界展開の手法を編み出した時代でもあった。長らく一部の富裕層のみの愛用品であったラグジュアリーブランドはなぜ大衆化を目指し、どのようにして世界中に顧客層を広げていったのだろうか。

40年以上ラグジュアリー業界に携わり、エルメス本社副社長として第一線でラグジュアリーブランドの変遷を見てきた齋藤峰明氏は、その背景を次のように解説する。

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吉 「出船に船頭待たず」
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