#5 評価
評価とは、ものの価値の有無やその程度を認める行為です。評価によって、価値が高まったり、潜んでいた価値が顕在化することもあります。これはつまり、評価によって価値が生み出されているとも言えます。評価というのは、とても創造的な行為なのかもしれません。
ひとりのつくり手として、僕はたくさんの人に届けたいとか、あの人に認められたいとか、比較的評価を気にしながらものをつくっています。ただ、評価されることへの欲求に偏りすぎないよう注意もしています。そうしないと、小手先の手法論が先に立ってしまい、本質を見失ってしまうからです。
売れる、バズる、賞を獲る。こうしたわかりやすい評価が目的化すると、ものづくりが、受け手や評価者に対する接待業になってしまう。本能的にそれは避けないといけないと感じています。
また、「評価」について考えるとき、本当にいいものがちゃんと評価されているのか? というのも気になります。発信力のある人、声の大きい人が評価されやすく、そうでないつくり手は評価されにくいということもあるような気がします。一方で、つくり手は、生み出した責任として、自身でその作品を評価の土俵に上げることも大事なのではないでしょうか。
インターネット登場以降、評価の権限が権威から民意へと拡張されています。Twitterや食べログ、アマゾンレビューなど、民意の評価が可視化されるようになり、つくり手にも受け手にも大きな影響を及ぼしているいまの時代に、あらためて「評価」のあり方や意義に向き合いたいと思います。(小野直紀)
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この記事は2019年7月24日に発売された雑誌『広告』リニューアル創刊号から転載しています。
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