67 グローバル流通の苦難と挑戦
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67 グローバル流通の苦難と挑戦

コロナが炙り出した小売の海外展開の課題

小売業はライフスタイルに直結した生活産業である。そしていま、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、人々のライフスタイルは世界中で大きく変化している。コロナによって生まれた新しい生活習慣は「ニューノーマル」と呼ばれ、アフターコロナの世界にどう対応するかがあらゆる業界で課題となっている。

しかし、コロナ禍に入り一気に重要性を増したDX(デジタルトランスフォーメーション)やサステナビリティ(持続可能性)への取り組みは、コロナ以前から起きつつあったトレンドでもある。コロナは私たちの世界をまったく別のものに変えてしまったわけではなく、もともと起きていた変化を加速させただけだと捉えることもできる。未来を見据えて準備を進めてきたかどうかが、コロナ禍によって如実に表れたかたちだ。

今回世界中に広がったコロナは、グローバルブランドの店舗戦略にも大きな影響を与えた。「ZARA」や「H&M」のようなファストファッションブランドから「アディダス」「ナイキ」といったスポーツブランド、「エルメス」「ルイ・ヴィトン」といったラグジュアリーブランドまで、世界中の都市に店舗を展開するブランドが、ロックダウンや経済活性化策など国やエリアごとの違いに翻弄されている。

一方、コロナ禍で活況を呈しているのがECだ。ブランドの自社ECはもちろんのこと、「アマゾン」や「ZOZO」「楽天」の売上は伸長。アマゾンは2020年の4~6月に前年同期比40%増、7~9月も36%伸び、純利益はそれぞれ2倍、3倍と高く伸びた。ZOZOの4~9月の商品取扱高は16.3%増、楽天の1~9月の国内EC売上収益は17.2%増だった。ラグジュアリーECとしてグローバルに展開する「ファーフェッチ」や「マッチズファッション」「ネッタポルテ」では、コロナ禍によって外出できなくなった消費者がオンラインの世界で国境を越え、パンデミック直後に利用者が急増した。

しかし近年、ECを主軸として展開してきたD2Cブランドを中心にITを得意とするデジタルネイティブな企業による実店舗への進出が増え、もはや「IT企業」「小売業」の区分けは意味がなくなってきている。代表的な存在が、「ワービー・パーカー」や「グロッシアー」といったD2Cブームを牽引してきた企業である。

歴史をたどれば、小売企業が企画・生産のメーカー機能を垂直統合してSPA(製造小売業)へと発展しはじめたのは1980年代の後半~1990年代にかけてのこと。「GAP」に始まり、「H&M」「ZARA」「ユニクロ」などがグローバルSPAと呼ばれるようになった。彼らは2000年代からECに力を入れはじめ、初期にはオンライン(EC)とオフライン(実店舗)のふたつのチャネルを展開するオムニチャネル化を推進。近年では、オンラインとオフラインを融合して利用者のニーズにあわせて自由に横断的に活用してもらうOMO(Online Merges with Offline)の取り組みを進めている。

D2Cブランドは、SPAのビジネスモデルを応用しながら、販売チャネルとしてECを主軸としている。そのためデータにもとづき顧客の反応を見ながら商品のカテゴリーやサービスなどを改善させていくスピードが速く、SNSをとおして直接顧客とブランド・商品とのリアルな接点を設けたことから「新たな小売のかたち」として注目されてきた。しかしD2Cモデルが普及するにつれて差別化が難しくなったことから、各ブランドが世界観を可視化するためにECと並行して実店舗にも着手しはじめたのが2015年頃から最近までの流れであった。D2CはSPAを進化させた業態でありながら、SPAが進めてきた「実店舗とECの融合」が小売業の成功のカギだという証左にもなった。

同様に、小売企業のデジタル化に対して、アマゾンやアリババなどのプラットフォーマーがものづくりや実店舗展開を始めたことも新たな流通戦略の流れと見て取れる。アマゾンは、実店舗展開の原点となる「アマゾン・ブックス」の1号店を2015年にシアトルにオープン。その後、無人店舗の「アマゾン・ゴー」を開発したり、2017年には当時約470店舗を展開する自然食品スーパーの「ホールフーズ」を買収するなど、実店舗への参入も強化している。さらに、近年PB(プライベートブランド)開発にも力を入れている。

また「ニューリテール」を標榜し、国をあげて小売のDXに取り組んできた中国では、アリババの「フーマフレッシュ(盒馬鮮生)」を筆頭に店舗でのエモーショナルな体験とECの利便性をかけあわせた店舗が生まれている。

「リアルとデジタルの融合」という点では、店舗での顧客接点と、店舗で得られたデータを収益源とするアメリカの「ベータ(b8ta)」の存在が象徴的だ。ベータはショールーミングの場として店舗を活用することで、「接客してもらったからには何か買わなければ」という罪悪感を払拭し、商品の発見や体験を楽しんでもらうことが結果的に販売につながるという考え方で生まれた企業である。一部その場で購入もできるが、従来型の小売店のように店頭での売上に応じてマージンを受け取るのではなく、店頭で得られたデータによる定量情報や接客で得た定性情報をブランドへの提供価値としているところに新しさがある。2020年8月には日本にも上陸し、世界で着々と店舗網を増やしている。

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