『広告』最新号、オリジナル版とコピー版を同時発売!
こんにちは。『広告』編集長の小野です。
昨年7月のリニューアル創刊号発売からはや8カ月。
本日、ついに最新号が発売になります。
今回の特集は「著作」です。
SNSを賑わせる“パクリ”騒動、違法コンテンツ配信問題などインターネット登場以降激変した(広義の)ものづくりをとりまく環境のなかで、いまあらためてオリジナリティや作家性、著作物の保護や利用のあり方などについての視点を集めました。
博報堂の著作権侵害?
企画を進めるなかで頭に浮かんだのは「そもそも博報堂が、オリジナリティとか著作権とか偉そうなこと言って大丈夫なの?」ということでした。
ご存知の通り広告会社はクライアントとともに日々大量の制作物を生み出しているのですが、すべての制作物が「オリジナルである」「著作権的に問題ない」と言えるのだろうか。会社的にはそう言わないといけないのかもしれませんが、実際にはグレーなものや法的にはOKでもモラルとしてはどうなの?というものもあるように思います。
そんな思いもあって、昨年の秋頃に「博報堂の著作権侵害(仮)」という企画を立てたのですが、社内で確認を取りはじめた途端、みごとにハレーションが起きました。一見、温厚そうな人の真顔での反発に「え、ちょっと怖い……」と怯えたほどです。
それでも、公開するかどうかは置いておいて社内調査だけでもやらせてほしいと懇願。実際に過去に起きた事案をヒアリングしてまとめながら、関係各所に博報堂が自らこうした記事を発信する意義(社内や業界に対しての問題提起など)を伝えて、校了のギリギリまで調整をしていたのですが、結局、会社からの承認が間に合わず本誌への掲載を断念することになりました。
その後、発売日(今日!)にnoteで公開しようとめげずに調整を進めていたのですが、残念ながら想定よりも大事になってしまい、公開をまたもや断念することになりました。(ここまで書いておいて公開しないんかい!となった方、本当にすみません。)
ただ言っておきたいのが、博報堂の人たちが非協力的なわけではなくて、役員はじめ社内のいろいろな人が協力してくれて、前向きに掲載できるように動いてくれました。結果的に、公開に向けての承認プロセスや懸念点つぶしにどうしても時間がかかってしまうということで、自分の会社ながら感謝の気持ちをもって、引き続き公開に向けて調整しているという状況です。
とはいえ、まだ公開できるかはわかりません。承認が取れ次第公開をしたいと考えていますが、もし公開できなければ、まあ、そういう会社なんだなということだと思います。(比較的やさしくて理解のある会社なんですが、こういう大企業然とした一面もあるということです。)
ここから本題です
前置きが長くなってしまいましたが、冒頭にも書いたとおり、本日3月26日、『広告』最新号が発売になります!
本号の企画制作にあたっては、『法のデザイン』(フィルムアート社)などの著書で知られる法律家の水野祐さんを監修に迎えました。また、近年「写真の著作物性」に着目した作品を制作している美術家の原田裕規さんとコラボレーションし、代表作のひとつである『One Million Seeings』を再構築して誌面に掲載しています。
そして、タイトルにも書きましたが、本号は「オリジナル版・価格2,000円(税込)」とオリジナル版をコピーして作成した“セルフ海賊版”とも言える「コピー版・価格200円(税込)」の2冊を同時に発売します。
上の写真がオリジナル版、下がコピー版でどちらも内容は同じですが、紙や印刷・製本方法の違い、そして価格の違いがどう受け止められるか、今回の特集のひとつのテーマである「著作物の保護や利用のあり方」に対する問いかけとしての施策です。ちなみに個人的にはコピー版のほうが好きだったりします。ぜひ店頭でご覧になってください。
リニューアル創刊号に引き続き、デザインは電通の上西祐理さん、フリーランスの加瀬透さん、牧寿次郎さんです。
雑誌の写真は、誌面にも登場する写真家のゴッティンガムさんに撮っていただきました。ウェブサイトにも他の写真を掲載しています。ウェブデザインはTHE GUILDの奥田透也さんです。
クリエイティブ・コモンズを採用しました
本号では、執筆者や取材先と協議のうえ、記事ごとにクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(※)を付与しています(一部の記事は対象外)。記事によって、自由にコピーしたり、改変したり、再配布することが可能です。教育機関や企業、団体での利用や新たな創作物における活用などポジティブな展開につながることを期待しています。
※クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは、インターネット時代のための新しい著作権ルールで、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません」という意思表示をするためのツールです。(詳細はこちら)
ぜひ書店で購入してください
『広告』は、昨年のリニューアル以来、特殊な販売方法をしていることもあって、書店と直接取引で販売しています。リニューアル創刊号は全国の161店舗で販売を行なったのですが、今回は全都道府県の書店においてもらおうと販売店を増やして全196店舗で販売を行ないます。
不要不急の外出が制限されているなか、こうしたことを言う是非はあるとは思いますが、こだわりのある素敵なお店ばかりですので、ぜひ書店に足を運んで購入してもらえるとうれしいです。
なお、各書店での『広告』の売上は、すべてそれぞれの書店の利益になります。2,000円のオリジナル版を買えば2,000円が、200円のコピー版を買えば200円がそのまま書店に入ります。
販売店一覧:https://kohkoku.jp/stores/
最後に
なぜ今回「著作」を特集したか、どんな問題意識を持っているかについて、巻頭メッセージに書いています。ひとあし先にこちらで公開していますので、ご覧ください。
そして、ぜひ『広告』最新号を読んで、意見や感想を聞かせてください。
読者アンケート:こちらからお願いします
メール:kohkoku@hakuhodo.co.jp
現在、次号に向けて企画をすすめています。みなさまからいただくフィードバックを積極的に取り入れていきたいと考えています。ご協力よろしくおねがいします!
『広告』編集長 小野 直紀
広告 Vol.414 特集:著作 <目次>
著作(こちらで公開中)
34 著作とオリジナリティ
作詞家 いしわたり淳治 × 『広告』編集長 小野直紀
35 著作権は文化のためになっているか
36 山寨(パクリ)
中国ウィキペディア「百度百科」より翻訳転載
37 パクリと中国
パクリ文化研究家 艾君(アイジュン) インタビュー
38 中国と日本の「ホンモノとニセモノ」
陳暁夏代 インタビュー
39 椅子にとって著作とは
ウェグナーの『Yチェア』に見る、椅子のオリジナリティ
40 引用なき名作は存在しない
映画における「昇華行為」と「オマージュ」
41 文壇のヒエラルキーと「パクリ」の境界線
小説家 島田雅彦 インタビュー
42 類型のなかに、いかに自分の型を見出すか
落語家 春風亭一之輔 インタビュー
43 創造性を高める契約書
写真家ゴッティンガムが示す共同著作のビジョン
44 振動する著作
45 プロデューサーの著作性
アゲハスプリングス代表 玉井健二 インタビュー
46 組織著作のアイデンティティ
プリキュアはなぜ愛され続けるのか
47 なぜ日本はコンテンツビジネスが下手なのか
48 独占か、共有か。特許とITの50年史
49 コピーと戦うファッション・ロー
50 現代美術とフェア・ユース
アプロプリエーションと向き合う著作権法
51 著作権管理は、音楽文化を生かすか、殺すか
52 これからの著作権
法律家 水野祐 × THE GUILD代表 深津貴之 × 『広告』編集長 小野直紀
53 文化的遺伝子は自由に繁殖したがる
Images: “Untitled (Copy/Original)”, 2020 ©Gottingham Image courtesy of the collaborator and Studio Gottingham