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『広告』最新号(特集:文化)、本日発売。「赤から想起するもの世界100カ国調査」の結果を公開します。

こんにちは、『広告』編集長の小野です。

年度末の本日3月31日、『広告』最新号が発売となりました。

編集長を卒業するので、僕にとっては、最新号であり最終号でもあります。制作しているなかで、大学時代の卒業制作(建築)を思い出しました。まさか社会人になって卒業制作をするとは……。

ということで、今号は、僕が編集長をやることになってから約5年間の集大成の号になります。

特集は「文化」。全35記事、1100ページ

2019年のリニューアル創刊以来、「価値」「著作」「流通」「虚実」と特集を組んできました。最後の特集は「文化」です。

「文化」はとても複雑で多義的な概念です。「文化」という言葉を発する側と受け取る側で異なる意味合いで解釈している場合もよくあるのではないでしょうか。

今号はこれまででいちばんの大作(←自分で言うものなのか不明ですが)で全部で35記事、1100ページ、44万字あります。数えてみると毎号文字数が増えていっています。価値20万字、著作24万字、流通30万字、虚実35万字。初号の倍以上……全部読んでくれる人は現れるのでしょうか……。

とはいえ、雑誌なので気になるものだけ読んでいただければと思います。リニューアル創刊以来、『広告』の編集コンセプトは「視点のカタログ」としています。カタログなので、全部読む必要はないのです(とハードルを下げる)。

記事のリストはこのnoteの最後に記載しますが、ここでは扱っているテーマをざっと書き出します。

文化の起源、文明と文化、遊びと文化、文化を耕すとは、文学の意義、教養の行方、文化の交配と捕食、カルチャー誌クロニクル、文化のインフラ、表現と規制、サブカルチャーと政治、閉じた文化、よい観客とは、非大衆文化、ジャニーズの大衆性、経済と文化、成金の文化支援、知、言葉、色、博物館の暴力性、京都の権威性、地域文化の継承、ふつうの暮らし、プラスチックと生活、ルールと文化、日本の文化度、文化の自己目的性

ピンとくるテーマがありましたら、ぜひ読んでいただけるとうれしいです。そして、パラパラめくるとほかにも気になる記事がきっとあると思います。

また、なぜ今回「文化」を特集したのか、「文化」をどう捉え、どんな問題意識を持っているのかについて巻頭メッセージに書いています。こちらで全文公開しているので、ぜひご覧ください。

『広告』文化特集号は下記よりご購入いただけます。

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表紙は、1冊1冊色味が異なる「赤」のグラデーション

今回の表紙は、1冊1冊色味が異なる「赤」のグラデーションです。人類が最初に使用した色とも言われる「赤」をシンボルカラーとして、シルクスクリーン印刷の技法で、様々な赤を組み合わせながら職人が手作業で刷り上げました。

この装丁で表現したかったのは「同質のなかの差異/差異のなかの同質」です。ぜひ書店などで複数の実物を見比べてください。シルクスクリーンならではの発色も美しいです。

写真:平松市聖

今回も装丁デザインは、上西祐理さん、加瀬透さん、牧寿次郎さんの3人のデザインチームが担当しました。

「文化」というテーマに向き合い、半年以上かけてつくりあげました。このチームで仕事をするときは、手を動かしてデザインをするのは最後の最後だけ。全体の9割が議論と雑談です。つくられた形を「デザイン」と捉える人もいると思いますが、このチームの場合は、「デザインの大半はつくる手前にある」と感じさせてくれます。

と、いい感じにまとめてはいますが、そして毎号言っていますが、今号は本当に苦戦しました。詳細は後日報告しようと思いますが、これまででいちばん時間がかかりました。

というのも、装丁だけを考えるのではなく、装丁とセットで特集にまつわる「問いかけ」の企画を考えているからです。それが次に書く今号の連動企画です。

連動企画「赤から想起するもの世界100カ国調査」

1円(税込)で販売した価値特集号、セルフ海賊版を同時発売した著作特集号など、『広告』では、毎号特集にまつわる問題提起や興味喚起を行なっているのですが、今号は連動企画として「赤から想起するもの世界100カ国調査」を実施しました。調査結果を『広告』ウェブサイトで公開しています。

愛、情熱、革命など「赤」には世界中で様々な意味が込められています。そうした「赤」に込められた様々な意味の差異や共通性を見ることで、「意味を共有するインフラ」としての「文化」と、その背景にある風土、伝統、宗教や思想に思いを巡らせるきっかけになればと制作しました。

校了後の2カ月間、世界100カ国12,000人による約10万件の「赤から想起するもの」とにらめっこして、いろんな発見がありましたが、ここでは調査結果のハイライトを以下に共有します。詳細は『広告』ウェブサイトに掲載しているのでぜひご覧ください。ハイライトで書いたデータ分析的な概要ももちろん興味深いのですが、実は数が少ない回答にその国のリアルを感じたりするので、読み込んでいくといろんな発見や学びがあっておもしろいです。

 ・「赤から想起するもの」世界トップ5は、①血 ②りんご ③愛 ④怒り ⑤バラ。日本トップ5は、①りんご ②血 ③トマト ④赤信号 ⑤いちご(図1)

・「赤から想起するもの」世界ランキングとの類似度がもっとも高い国はオーストラリア、2位はアラブ首長国連邦。もっとも低い国は韓国、日本は2番目に低い結果に (図2)

・「りんごから想起する色」について、日本では約90%が「赤」を想起したが、世界全体では赤の想起は約60%にとどまり、約15%が「黄緑」を想起(図3)。「黄緑」が多数派の国は欧州やアフリカを中心に15カ国(57カ国中)あった

・「血」「情熱」「太陽」など国旗の赤の意味は、その国の「赤から想起するもの」回答ランキングの上位に入る傾向が見られた (図4)

・国旗の色が「お祝いから想起する色」トップ3に含まれる国が多く見られた。国旗の色とお祝いの色トップ2、トップ3が一致する国は、フランス、マダガスカル、日本、ベトナムなど (図5)

そして、トップページでは、「赤から想起するもの」を回答欄に入力すると、本調査の回答者12,000人中何人が同じ回答をしたか、100カ国中何カ国の人が答えたか、どの国の回答率が高かったかなどが表示されます。また、回答数の多い単語については、その単語と「赤」の関係の解説を用意しています。ぜひ試してみてください。

調査にあたっては芝浦工業大学 色彩・コミュニケーションデザイン研究室の日髙杏子先生に監修いただきました。また分析はデータサイエンティストの新倉健人さん、ウェブサイトのデザインと実装は奥田透也さんが担当しています。

最後に

(「最後に」と書いて、目から思いが溢れそうになりました。今号の販売やイベントなど、あと少しだけ編集長を続けますが、最後のお礼を言わせてください)

今号の制作にあたっては、取材先、執筆者、校閲、印刷、製本、取次、書店、デザインチーム、編集部、そして世界100カ国調査の制作チーム、そのほか本当にたくさんの方々に協力いただきました。

そして、2018年の夏に編集長をやることになってから約5年間。本も雑誌もほとんど読まない(いまは随分と読むようになりました)、編集の経験もない素人編集長がつくる『広告』に快くかかわっていただいた皆さま、読んでいただいた皆さま、ここまでおつきあいいただき本当にありがとうございました。

ちなみに僕が卒業したあとの『広告』がどうなるかは未定だそうです。そして、卒業したあとの僕自信が何をするかも未定です。ほかの仕事をそっちのけで全力を投じていた『広告』が終わるので、ぽっかりと時間が空きます。なにか誘ってください。僕からもお誘いするかもしれません。

『広告』編集長 小野 直紀

広告 Vol.417 特集:文化 <目次>

文化(こちらで全文公開中)

108 文化とculture
社会学者 吉見俊哉 × 『広告』編集長 小野直紀
文:山本 ぽてと

109 ドイツにおける「文化(Kultur)」概念の成立とその変質
文:小野 清美

110 文化と文明のあいだ
文:緒方 壽人

111 まじめな遊び、ふざけた遊び
文:松永 伸司

112 建築畑を耕す
文:大野 友資

113 断片化の時代の文学
構成・文:勝田 悠紀

114 現代における「教養」の危機と行方
哲学者 千葉雅也 × 『ファスト教養』著者 レジー
文:レジー

115 ポップミュージックにおける「交配と捕食のサイクル」
文:照沼 健太

116 カルチャー誌の過去と現在
文:ばるぼら

117 「文化のインフラ」としてのミニシアターが向かう先
構成・文:黒柳 勝喜

118 激動する社会とマンガ表現
文:嘉島 唯/編集協力:村山 佳奈女

119 中国コンテンツをとりまく規制と創造の現場
文:峰岸 宏行

120 SNS以降のサブカルチャーと政治
文:TVOD

121 開かれた時代の「閉じた文化の意義」
哲学者 東浩紀 インタビュー
聞き手・文:須賀原 みち

122 文化を育む「よい観客」とは
文:猪谷 誠一

123 同人女の生態と特質
漫画家 真田つづる インタビュー
聞き手・文:山本 友理

124 ジャニーズは、いかに大衆文化たりうるのか
社会学者 田島悠来 × 批評家 矢野利裕
構成・文:鈴木 絵美里

125 ディズニーの歴史から考える「ビジネス」と「クリエイティビティ」
文:西田 宗千佳

126 ラグジュアリーブランドの「文化戦略」のいま
文:中野 香織

127 成金と文化支援
日本文化を支えてきた「清貧の思想」
文:山内 宏泰

128 経済立国シンガポールの文化事情
文:うにうに

129 流行の歴史とその功罪
文:高島 知子

130 広告業界はなぜカタカナが好きなのか
「いいもの」は未知との遭遇から生まれる
文:河尻 亨一

131 クリエイティブマインドを惹きつけるアップル文化の核心
文:林 信行

132 未知なる知を生み出す「反集中」
文:西村 勇哉

133 「ことば」が「文化」になるとき
言語学者 金田一秀穂 × 『広辞苑』編集者 平木靖成
聞き手・文:小笠原 健

134 風景から感じる色と文化
文:三木 学

135 「共時間(コンテンポラリー)」とコモンズ
ミュージアムの脱植民地化運動とユニバーサリズムの暴力
文:小森 真樹

136 京都の文化的権威は、いかに創られたか
話し手:歴史学者・高木 博志/構成・文:杉本 恭子

137 生きた地域文化の継承とは
3つの現場から見えたもの
構成・文:甲斐 かおり

138 ふつうの暮らしと、確かにそこにある私の違和感
文:塩谷 舞

139 過渡期にあるプラスチックと生活
なぜ、紙ストローは嫌われるのか?
構成・文:神吉 弘邦

140 文化的な道具としての法の可能性
文:水野 祐

141 「日本の文化度は低いのか?」に答えるために
構成・文:清水 康介

142 イメージは考える
文化の自己目的性について
文:中島 智


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