_0_価値扉

#0 価値

「意味」はあるけど、「価値」はあるのか?

買い物に行ったり、マンガを読んだり、日々いろんなものに触れるなかで、そう考え込んでしまうことがあります。どこかで見たことのあるデザイン、何が新しいのかわからない新製品、似たような設定の似たような絵のマンガ。そういう、なんだかつまらないものでも、きっと、誰かの役に立って、誰かを楽しませて、誰かの儲けになっている。それが存在する「意味」はあるんだと思います。

でも、それに「価値」を認めてしまうと、世の中がつまらなくなってしまう気がするのです。

つまらないものはつくりたくない。いつもそう考えて必死にものをつくっているのですが、はたして自分は価値を生み出せているのだろうか……。成功事例の真似をして、効率と合理性を重んじながら、事情を言い訳に妥協する。そんな姿勢に反発しつつも、受け入れてしまっているつまらない自分も存在しています。

人が一生かかっても消費しきれないほどものが溢れて、ときめかないものはすぐにゴミになる。この時代に、本当に価値あるものとは何なのか、これから価値あるものをどう生み出していけばいいのか。

本誌の全体テーマである「いいものをつくる、とは何か?」という問いを思索する出発点として、本号では「価値」を特集に据えました。そして「価格」「新しさ」「無用」「コスト」「評価」の5つの切り口を通して、「価値」についての様々な視点を投げかけていきたいと思います。(小野直紀)

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この記事は2019年7月24日に発売された雑誌『広告』リニューアル創刊号から転載しています。

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