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丸く収まらないトンガリサークル白書 関西編|京都大学 キャップ投げ倶楽部  (木原元編集長イチオシ記事 #2)

奇抜な情熱に溢れる大学生に会いに行こう! 相変わらずの若者像が見えてくるはずだ。大人はすぐに若者にレッテルを貼りたがる。「さとり世代」なんて、ひと括りにしてしまう。でも、そんなわけないだろう。絶対にバカバカしくも情熱的に何かをやってるはずだ。

後列左から)春田晃くん、藤井航平くん、副部長の今村優斗くん、三輪凱人くん、遠山直之くん、中垣駿介くん、井森涼介くん、藤原公輝くん
前列右)部長の日野湧也くん

絵に描いたような自由集団

 京都大学の時計台の下で待ち合わせをしていると「まさか、雑誌『広告』の方ですか?」と青年が近づいてきた。残念ながら、そのまさかである。
 キャップ投げ倶楽部の部長であり、創始者とも言える日野くんと合流し、大学の中庭に移動する。倶楽部のメンバーは、順次、集結してくるらしい。

これで走ってきた? なんか、いいっすね。


 程なくして、樹液に集まるカブトムシのように、ぞろぞろと倶楽部のメンバーらしき人間が集まってきた。そして、何の予告もないままにペットボトルのキャップを飛ばし、野球のような遊びをおっぱじめる。本当に、ちょっと遊ぼうぜ! という自然な感じでのフェードインだ。

本気で来いよ。今度は打つからな。

「あの、取材を始めたいんだけど…」
 誰も聞いてくれない。今度は絶対に打つ! とか何とか言って、勝手に盛り上がっている。自由にも程があるぜ。「おい、いいから聞け! 取材は・じ・め・ん・ぞ!」。やっとの思いで、メンバーたちを着席させ、取材開始だ。このゆる〜く始まっていく感じが、俺に自分の大学時代を思い起こさせる。

とりあえず座ろう、な? 頼むから取材をさせてくれ。

 キャップ投げとは、ペットボトルのキャップを指先で弾き飛ばす競技である。その技を磨きあげ、本物の遊びとして普及させることがキャップ投げ倶楽部の使命とのことだ。で、実際にどんな練習してんの? 部長の日野くんに聞いてみると、

アチョー

ウォリャー

 突然、軽快な動きで飛び蹴りをしたり、カエルのようなポーズで筋トレのようなことをやり始めた。キャップ投げの創始者である日野くんが週5回、1日20分の練習をして、神業級のキャップ投げを体得したことは事前情報として知っていたが、まさかここまでアクロバティックな鍛錬を積んでいるとは、思いもよらなかった。みんな、こんな高度な練習をしているのだろうか?
「そうですね、一流のボトルキャッパーは、しなやかな足さばきと、指の筋力が命ですから…」とのことなので、私も早速、試してみた。

ウォリャァー

 ツライ。これはストイック過ぎる。「ゴメン、おれ勘違いしてた。みんな結構、ガチで鍛錬してんだな!」。メンバーたちの方に顔を向けると、どうも様子がおかしい。副部長の今村くんを筆頭に、全メンバーが俯いて、小さく首を横に振っているのだ。

……。

 何か違うっぽいぞ、と日野くんの方を見ると、あれ? 違ったっけ? みたいな表情をしている。
 危ない危ない。これは気を引き締めて、慎重に取材を進めなくてはいけないようだ。

目指すは、ユニバーサルスポーツ!
世界各国、老若男女が「MYキャップ」を持つ時代へ。

 とりあえず仕切り直して、キャップ投げの魅力について聞くことにする。「いつでも、どこでも、誰でもできる暇つぶしの最高峰なんですよ」。誰でも簡単に楽しめて、どこでもできて、実は奥が深い。完璧な遊びだと日野くんは語る。
 全国、全世界いいや全宇宙にこの完璧な暇つぶしを普及させることが自分たちの掲げる目標だと目を輝かせる。

暇つぶしの最高峰っすね!

「全宇宙は言い過ぎだけどな」。若干のツッコミはあったものの、他メンバーが笑顔で頷く姿は確認できた。いまの話は、倶楽部の総意のようだ。

あ、それは正しいです。

 倶楽部のモットーは、「気持ちには蓋をしない」と「蓋とともに生きる」の二つとのこと。他メンバーが一斉に首を傾げる。どうやら日野くんオンリーのモットーらしい。ややこしいわ!

 日野くんがキャップ投げを始めたキッカケは、高校時代に、教室の反対側にゴミ箱があって、たまたまキャップを飛ばしてみたら入ってしまい、その快感が忘れられなかったことにある。
 私もメンバーの指導のもと、何球か飛ばしてみたが、確かにシュルシュルシュル〜と円盤のように回転しながらキャップが美しく飛んでいったときの快感は堪らない。何だか中毒性のようなものさえ感じる。
 キャップを持つ向きや指の添え方で、球種は10種類もあるというのだから、奥も深い。

シュルシュルシュル〜

 さらにメーカーや商品によってペットボトルの種類が異なり、キャップの飛び方も変わってくるとのこと。厳密に言うと、球種のバリエーションは相当なことになるはずだ。
 現在、キャップを投げるだけではく、的に当てる遊びや、野球のように少人数で遊べる競技ルールの制定にも取り組んでいる。いずれも、いつでもどこでも誰にでも楽しめる“暇つぶし原理”に基づいた方向性でのルールづくりを心掛けているという。

自慢の京風キャップBOX。「キャップ選びも重要なんすよ」。

「暇つぶしの最高峰は、暇を持て余す俺らだからこそ進化させられる。暇つぶしが充実したら、世界はもっと平和になるはずだ」という日野くんの発言は、あながち間違えていないような気もする。
 いやむしろ、暇はつぶすものではなく、「つくる」ものになって、老いも若きもシュルシュルとキャップを飛ばしあう光景が当たり前になるかもしれない。もう想像するだけで、牧歌的かつ平和的な光景ではないか!  頑張ってくれ、キャップ投げ倶楽部。

クソ、もう一回やらせろ!

あなたも絶対にハマる!
日野部長直伝 キャップ投げ10球種を大公開!

ストレート

チェンジアップ

フォーク

カーブ

シュート

シンカー

ライジング

ナックル

スライダー

Vスライダー

文:木原龍太郎 写真:中嶋久美子

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『広告』2018年 2月号 vol.409
特集「奇抜な情熱〜場外ファウルボールをかっとばせ!」

こちらよりご覧ください

※2018年1月19日発行 雑誌『広告』vol.409 特集「奇抜な情熱」より転載。記事内容はすべて発行当時のものです。

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