72 メディアに対する映画監督の目線 〜 ニコラス・W・レフン、岩井俊二 インタビュー
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72 メディアに対する映画監督の目線 〜 ニコラス・W・レフン、岩井俊二 インタビュー

2020年代に入り、動画メディアを取り巻く環境は、視聴デバイスや配信メディア側のサービスの充実、受け手側の環境や意識の変化などによりますます多様性を見せている。

映画館のスクリーンのみで「映像」を観ていた時代、家庭のテレビで地上波の放送を見る時代を経て、いまでは、スマートフォンやタブレット端末といったパーソナルな動画視聴端末をとおして映像に触れることがあたりまえとなった。また、YouTubeやTikTokといったサービスにアップロードされた映像を楽しんだり、一般人が自ら映像を発信することも珍しくない。

コロナ禍において国同士の行き来に制限が生まれ、映像による情報伝達への依存度が高まっている昨今の状況を踏まえつつ、本稿では“メディアを作品側から捉える”ふたりの映画監督へのインタビューをとおして映像芸術とメディアについて考察する。

最初に話を伺ったのは、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した『ドライヴ』や『ネオン・デーモン』などの作品によって世界的知名度を得たニコラス・W・レフン監督。2019年、非常に実験的な初のテレビドラマシリーズ『TOO OLD TO DIE YOUNG』をアマゾン・プライム・ビデオで配信、その前年には自身が影響を受けた過去の作品を無料で紹介・閲覧できるストリーミングサービス「byNWR」をアメリカのケーブルテレビ局HBOと組んで立ち上げている。


ニコラス・W・レフン監督 インタビュー

── アマゾン・プライム・ビデオで配信されたレフン監督初のテレビドラマシリーズ『TOO OLD TO DIE YOUNG』は、アイデアが先行し、その後アマゾンに企画のオファーをしたそうですね。それ以前にも作品構想ができたあとにメディアを探したことがあったのかを教えてください。

レフン:僕は1978年、8歳のときにニューヨークに来たんですが、そこで初めてテレビの力を感じました。当時僕の故郷のデンマークには国営放送がひとつしかなかった。でもアメリカではいくつもチャンネルがあって。そこで初めて映画にも触れました。その後、映画館に行くようになって、そこで映画を観た体験は、教会や美術館にいるような感覚でした。

’90年代後半、幸運なことに潤沢な資金を持っている投資家と出会えて、方向性やチャンネル名まで考えて、デンマークで自分のテレビチャンネルを開く計画を進めようとしたのですが、結局は誰も真剣に話を聞いてくれなくて、頓挫したんです。その後、ロサンゼルスで『ネオン・デーモン』をつくっていた時期、ネットフリックスがすでに配信で成功していたこともあり、周りからは配信を勧められるようになりました。やはり、自分の好きなときにログインして映像を見られるのが、配信のメリットですよね。

『ネオン・デーモン』はアマゾン・スタジオの配給作品になったのですが、アマゾン・スタジオの責任者が僕のことをすごく気に入ってくれて、「もし何かやりたいんだったら出資するよ」と言ってくれたんです。そこで「ストリーミングの作品をつくりたい」と言って、プロットを書いて送りました。そこで、「やりたいようにやっていい」と言ってもらえて、ロンドンのSOHOハウスでナプキンの上に契約書を書いたんです。インディペンデントでは資金集めや企画をとおすことはすごく大変ですが、そういうハードルもなくスムーズに進んだので驚きました。

そこから『TOO OLD TO DIE YOUNG』の制作に入りました。テレビは保守的なメディアですが、配信だったら新しい挑戦ができると思い、すごく長い作品をつくって流し続けたいと思いました。結果的に『TOO OLD TO DIE YOUNG』は13時間の作品になりました。ゆったりとした手触りで、絵画を描くようにアプローチしたかった。美術館で絵画を鑑賞するような感覚、あるいは13時間旅をし続けているような感覚で、作品を体験してもらいたかったのです。いまは、要素が多いスピード感のある作品が主流ですが僕はそこに疑問を持っていて、逆に視聴者がイライラしてしまうくらいゆっくりさせようと思ったんです。

でも『TOO OLD TO DIE YOUNG』の制作が終わったあとにそのアマゾン・スタジオの責任者が代わりました。新しい責任者は、『TOO OLD TO DIE YOUNG』を観て、心臓発作を起こしそうなくらい驚いて、「短くしないならお蔵入りにする」と言ってきたのです。しかし太陽を沈めることはできないように、動き出しているものを止めることはできないと言って従わなかった。巨大な企業がそういう反応を示す作品を、自分がつくったということには満足感もありますね。そもそもクリエイティビティというものは、人に強いインスピレーションを与えるものですから。

── 『TOO OLD TO DIE YOUNG』はまるで順路に従って美術館の壁にかかる絵画を閲覧するような印象があったので、すごく納得しました。次に、企業から出資を受けるデメリットと自身の制作会社で作品をつくるメリットについて教えてください。

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