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丸く収まらないトンガリサークル白書 関東編|早稲田大学 増門会 (木原元編集長イチオシ記事 #5)

左)戦略部長の中田智博くん
右)会長の中野絢斗くん

スーツ姿の2人組がやってきた

 早稲田大学に隣接する公園で増門会のメンバーと待ち合わせることになっていた。平日の昼間に、ボロボロになったデコチャリと精神的疲労でグッタリしている中年。もはや何人たりとも近寄りがたい雰囲気を醸し出している。

 しばらくすると、スーツ姿の2人組が近づいてきた。「もしかして、博報堂の方ですか?」。もうこの手の質問には慣れてきた。「その、もしかしてです」と答えると、「ハクホウドウって、広告会社のハクホウドウですよね?」と念を押してくる。まあ、念を押したくなる2人の気持ちは、わからんでもないのだが。

刑事に任意同行を求められている被疑者といった光景。

 このスーツ姿の2人が、増門会の創設者である中野くんと中田くんである。

あの…、この自転車は?

 取材依頼をするときに、デコチャリで行くということまでは伝わっていなかったようだ。「この自転車で来たんだよ」とサラッと私が言うと、「何で!?」と目を剥いている。「まぁ、取材車両みたいな感じかな」とこれまたサラッと言うと、「本当に博報堂の方ですか?」とでも言いたげな表情を浮かべている。

悪かった。ちゃんと経緯を話そう。

 直射日光は、髪の毛にダメージを与えるかもしれないと思い、日陰に場所を移す。そこでこれまでの経緯を話すと、「そうだったんですね、謎が解けてきました」と少し安心してもらえたようだ。冷静を装っていたが、やっぱり頭の中で謎が渦巻いていたのだろう。

 今度はこっちの番だ。そもそも増門会とは何なんだろう。何をやっているサークルなのだろう。こっちだって、謎だらけの状態なのである。早速、取材を始めることにした。

 増門会は、平成28年の4月に結成された全国最大の「ハゲサークル」だ。ハゲサークルとだけ聞くと、強烈なインパクトが先行するが、その活動内容はサッパリ見えてこない。まずは、そこらへんを重点的に聞くことにする。

「増門会は二本の柱を軸に活動しています」と、中野くんが静かに語り始めた。ひとつは、ハゲ差別のない社会を実現するためのムーブメントづくり。「それは、ハゲでもカッコいいと思える社会ってこと?」と私が聞くと、「いやいや、その“ハゲでも”という考え自体を世の中からなくしたいわけです」と即座に指摘が入る。スマン、迂闊だった。以後、表現に気をつけよう。

いま何と言いました? ハゲでも?

「ハゲ問題そのものに脚光を浴びさせることが使命です」と中田くんが熱を込めて語る。ハゲに関して、こういう主義主張もあるんだということに耳を傾けてほしい。そして、ハゲに対する社会の認識を変えていきたいと考えているのである。

ハゲへの偏見や差別のない世の中へ。
増門会は、“実践的学術サークル”なのである。

 増門会の第2の活動の柱は、「ハゲの根本的な治療法の発見」だ。
 もちろん、大手企業や研究機関のように立派な設備があるわけではないが、メンバー自らが被験者となって「実践する」ことに取り組んでいる。

「1週間同じ物を食べ続けて、その食べ物に発毛効果があるのかを検証したり、落ちている髪の毛を拾って、なぜこの髪の毛は落ちてしまったのかを分析したり、活動は様々です」。確かにかなりガチだ。

 髪の毛の半分を染めて、染めない方と比べて髪がどう傷むかを体を張って研究しているメンバーもいるとのこと。それって、事情を知らない人からすると、「何だ、このシンメトリーなカラーリングの奴は!?」ってことになるわけで、抜け毛の治療に身を捧げるにも程がある自己犠牲的な検証といえるわけだ。活動の一端を知るだけでも、増門会の情熱と本気感がうかがえる。

スーツ姿は、情熱と真剣の証。

 それにしても気になるのが、なぜスーツ姿なのかということだ。2人は大学2年生なので、就職活動というわけではないだろう。

「ハゲをネタにする冗談サークルじゃないことを表明するためです」

 なるほど、その正装は真剣の証ってやつか。何だかトレパン姿の自分が“冗談の塊”のように感じられて、恥ずかしい気持ちになってしまう。

 しかも、2人とも姿勢が良く、手の置き方など、振る舞いが高貴な武士のようなのだ。別に2人で示し合わせたわけではない。自然と同じような振る舞いになるのだという。これは「道(どう)」を極めようとする者の姿勢である。

偶然に一致する礼儀正しい振る舞い。 

 増門会メンバーの大半は、小中高時代に、「ハゲ」だの「落ち武者」だのあだ名をつけられ、からかわれてきた経験を持つ。そして大学生になった今、「しっかりと声をあげて、ハゲへ関心を持ってもらい、そして認識を変えたい」と立ち上がったのだ。

 ハゲについて見て見ぬフリをするのではなく、みんながしっかりとハゲについて考えるように門戸を開く。「自分たちがその起点になれたらうれしい」と姿勢を正して語る2人は、まさに増門道を歩むサムライそのものだ。増毛じゃなくて、増門か。何だか非常に腹落ちしたぞ。たぶん、真意は違うと思うけど。

 頑張れ、増門会。未来を明るく照らしてくれ!

「何か、広告会社のイメージが変わりました」
「いや、それは変えちゃダメ。特殊なケースだから」

夏休み自由研究
中田くんは丸坊主になって発毛過程を追跡した!

メンバーにバリカンを入れてもらう。今にも泣きだしそうな哀しい表情が印象の一枚である。

メンバーが気を利かせたのか。急に写真のタッチがインスタっぽくなる。カッコイイじゃん!

自撮りで撮った写真。動揺のためかブレている。でも、その体当たり精神がカッコイイではないか!

文:木原龍太郎 写真:中嶋久美子

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『広告』2018年 2月号 vol.409
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※2018年1月19日発行 雑誌『広告』vol.409 特集「奇抜な情熱」より転載。記事内容はすべて発行当時のものです。

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