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36 山寨(パクリ) 〜 中国版ウィキペディア「百度百科」より翻訳転載

本稿は、中国版のウィキペディアと言われる「百度百科」の「山寨(「パクリ」を意味する新語)」の全項目(2019年12月26日時点)を翻訳のうえ、編集を加えずそのまま転載したものです。翻訳にあたっては一部意訳を行なっており、文中の「※」は編集部による補足です。事実関係の確認は行っていません。なお、画像は「百度百科」の「山寨(「パクリ」を意味する新語)」画面より引用しています。

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「山寨」の記事 引用元:「百度百科」ウェブサイト


山寨(「パクリ」を意味する新語)

山寨(シャンジャイ)とは中国語の言葉で、ピンイン(※中国語の発音表記法)はshān zhài。模倣、複製、盗作などによって模造あるいは偽造された製品を指す。「山寨(パクリ)文化」などの言葉もある。

中国語名:山寨
英語名:Copycat
基本的な語義:模倣
語源:模造品の生産場所が山寨(防御施設のある山村)に隠されていたことによる。

3つの側面

1. 「山寨(パクリ)製品」
山寨(パクリ)製品には3つの面がある。ひとつは物質的な面。山寨(パクリ)品は政府の管理を逃れて生産されたもので、俗に海賊版、クローン、模造品などと呼ばれ、IT技術の発展とともに成長してきた。山寨(パクリ)製品の特徴は、模倣性の高さと商品化の速さ、そして低価格化にある。多くは小規模工場で生産され、有名ブランドの製品が模倣されていった。山寨(パクリ)の対象範囲は、携帯電話、ゲーム機、デジタルカメラ、MP3プレーヤーなど多岐に及ぶ。

山寨(パクリ)携帯は、有名ブランド製品との相似性を求めてつくられている。正規品を盗作することで研究開発費が節約されるため、価格は正規品の5分の1以下に抑えられるという。材質と仕上がりは正規品よりやや劣るが、多機能で流行に乗った外観であることから中間層〜低所得者層に人気があり、業界規模は拡大を続けた。また、インターネット上には「中国産のすごい製品を広め、山寨(パクリ)文化で交流しよう」をスローガンに掲げるサイト「山寨機網」なども存在する。

2. 「山寨(パクリ)文化」
ふたつめは精神面、言い換えれば精神文化現象についてである。精神面には、山寨(パクリ)行為の主体者および大衆の社会心理、美意識や社会的風潮、新たな価値体系なども反映されている。山寨(パクリ)に関する精神面こそ「山寨(パクリ)文化」の核心であり、現在の「山寨(パクリ)現象」に対する批判も精神面にもとづいている。

山寨(パクリ)が私たちにもたらすものは何か。山寨(パクリ)は中国文化の発展にどのような影響を与えるのか。理性的に山寨(パクリ)文化を見つめるには、精神面を切り口に考える必要がある。

2008年末には山寨(パクリ)製品から始まった山寨(パクリ)現象がインターネット全体に広がり、山寨(パクリ)タレント、山寨(パクリ)『紅楼夢』(※清朝中期に書かれた中国の長編小説)、山寨(パクリ)テレビ番組などが現れ、これまでのメインカルチャーに対抗。CCTV(※中国の国営放送「中国中央電視台」)のニュースでも紹介された。政府機関が民間の現象について初めて見解を表し、これを機に「山寨(パクリ)」という概念が全国的に知られることとなった。

3. 「山寨(パクリ)行為」
3つめは行為面。山寨(パクリ)行為が知的財産権の管理機構や知的財産に関する法律をくぐり抜けていることについてである。社会システムのなかで政治・経済・文化は相互に連動しており、山寨(パクリ)製品が消費市場に与えるインパクトは極めて大きい。山寨(パクリ)行為は、中国の多様な現代文化をあらためて構築する行為でもあり、中国の発展に影響を及ぼすことに疑いの余地はない。この問題にどう対応し、いかにプラスの効果を上げていくか。関係者たちにとって喫緊の課題となっている。

山寨(パクリ)の紹介

1. 第三者の商品を模倣または偽造している疑いのあるメーカーを指す。「山寨(パクリ)」とは、文字から解釈すれば「山のなかの砦」を意味する。広東語に由来し、「山賊の縄張り」「政府の管理から逃れる」などの意味がある。

2. 俗に海賊版、クローン、模造などと呼ばれ、IT技術の進歩によって発展した現象である。派生した言葉に山寨(パクリ)機、山寨(パクリ)タレント、山寨(パクリ)鳥の巣(※北京国家体育場)などがある。山寨(パクリ)文化は法律の隙間を突き、産業政策のギリギリを突くことから、論争を巻き起こしている。

3. 山寨(パクリ)工場の多くは、正規工場に部品を供給する非正規の小規模工場、または低コストで不安定な品質の製品を生産する民間工場である。

4. 電化製品や最新テクノロジーに関するニュースサイト「エンガジェット」では、山寨(パクリ)は「KIRF(= keeping it real fake)」という新語で表現されている。海外との交流によって生まれた新語であり、中国の強大な山寨(パクリ)メーカーが世界に与える影響力の大きさを物語っている。

5. 山寨(パクリ)はとくに山寨(パクリ)文化を指し、山寨(パクリ)という言葉のイメージはいまやよいものになっている。

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