『広告』最新号(特集:虚実)、発売! 不確かで多様な現実ともののあり方を考える全24記事
こんにちは、『広告』編集長の小野です。
2018年の夏頃に編集長を引き受けてから、3年半ちょっと。月日が流れるのはとてつもなく早い、そう感じる一方で、出版ペースは相変わらずゆっくりな雑誌『広告』です。
当初の企画書に書かれていた今号の発売予定は10月でした。最初から、なんだかんだで12月くらいになるかなとは思っていました。でも、蓋を開けてみたら「なんだかんだ」が多発し、結局3月に……。
前号までは、設定した発売日がどんどんずれていくことに、後ろめたさや焦りを感じていたのですが、最近ではそうした気持ちも薄れはじめています。まあ年に1冊出せればいいか、とすら思うようになってしまいました。
こんな気持ちで制作をするのは、関係者や読者のみなさまに失礼なのかもしれません。でも、発売日が遅れることと手を抜くことは決して同じではありません。
僕にとって雑誌『広告』は、「博報堂のお金をつかって好き勝手やっていい雑誌」という認識からスタートしました。この贅沢な環境にとことん向き合って、どうせやるなら普段の仕事ではなかなかできない、効率や再現性の真逆をやろうと決めました。そして、毎号いろんな試みをしているのですが、やりたいと思えることを見つけるまで、そのやりたいことを実現するまでに、どうしても時間がかかってしまいます。
今回は特に「虚実」という抽象的なテーマだったこともあり、編集も装丁もとても苦戦しました。迷走しました。でも、取材先、執筆者、印刷会社、製本会社、書店、デザインチーム、編集部など各領域の関係者のみなさまのおかげで、なんとか形にすることができました。
本日3月1日、ついに『広告』最新号が発売になります!
『広告』の全体テーマである「いいものをつくる、とは何か?」を思索する第4弾の特集は、「虚実」です。
嘘と本当、フィクションとリアリティ、イメージと実体、バーチャルとフィジカル、心と体、形而上と形而下……。
虚と実を二項対立ではなく、混ざり合い作用し合う“化合物”と捉え、不確かで多様な現実やもののあり方について様々な視点を投げかけます。
『広告』最新号(特集:虚実)書影
巻頭メッセージにも書きましたが、“「虚実」について考えることは、自分自身の価値観や欲望、社会通念や常識を疑い、能動的に自らの現実を築いていくための態度を鍛え、また、他者にとっての現実を想像し受容する原動力になる”と考えています。
ぜひ、「虚実」にまつわる全24記事をとおして、『広告』の全体テーマである「いいものをつくる、とは何か?」について思索していただけると幸いです。
・巻頭メッセージ(noteにて無料公開中)
https://note.com/kohkoku/n/n6f4851c517d1
そして今号では、特別企画としてARクリエイターの北千住デザインとコラボレーションし、誌面全ページで様々なARを体験できる専用アプリを開発しました。
アプリをとおして現実空間と仮想空間が混じり合う体験をお楽しみいただけます。
『広告』最新号(特集:虚実)特別企画アプリ画面イメージ
※専用アプリは、誌面内のQRコードよりダウンロードできます。
※スマートフォンの機種やOSのバージョンによってご利用いただけない場合があります。
※AR体験は紙版のみとなります。Kindle版では体験できません。
装丁デザインは、今回も上西祐理さん、加瀬透さん、牧寿次郎さんの3人のグラフィックデザイナーにご担当いただきました。「虚実」という抽象的なテーマに向き合い、半年に渡って議論と検証を重ねてつくりあげた装丁です。 ぜひ実物をご覧ください。
また、発売に合わせてウェブサイトも更新しています。「虚実」というテーマに相応しい、ちょっとシニカルなウェブサイトになりました。デザインはTHE GUILDの奥田透也さんです。
・『広告』ウェブサイト
https://kohkoku.jp
『広告』最新号(特集:虚実)は、Amazonおよび全国222の書店で販売しています。
2月8日より予約販売を行なっていましたが、Amazonだけでも約1500冊の予約をいただきました。
販売数には限りがありますので、興味のある方はお早めにご購入ください。
・販売店一覧
https://kohkoku.jp/stores/
・Amazonでの購入
https://www.amazon.co.jp/dp/B09RWJ3B9Z
最後になりますが、僕の『広告』編集長の任期はあと1年です。そもそも慣例としては2年で8冊だったのが、3年半で4冊しか出せていないので決まった任期も何もないのですが、リニューアル創刊号を出したときから、5冊つくろうと決めていました。あと1冊やりとげます。
ぜひ今回の『広告』虚実特集号を手にとってください。そして、忌憚のないご意見やご感想をいただけると嬉しいです。最終号の制作に向けての反省と励みにさせていただきたいと思います。
『広告』編集長 小野 直紀
広告 Vol.416 特集:虚実 <目次>
虚実(こちらで無料公開中)
84 虚実と世界
哲学者 清水高志 × 『広告』編集長 小野直紀
文:斎藤 哲也
85 人はもの自体を認知することはできない
認知科学研究者 渡邊克巳 インタビュー
聞き手・構成:金 じょんひょん/文:かのう よしこ
86 認知拡張が拓く人間や世界のあり方
VR研究者 鳴海拓志 インタビュー
聞き手・構成:金 じょんひょん/文:かのう よしこ
87 セカンドライフ社会学
社会学者 池上英子 インタビュー
聞き手・文:岡田 弘太郎
88 プレ・メタバースと消費
無限の世界で金と時間はどこへ行く?
構成:岡田 弘太郎/文:川鍋 明日香
89 「虚」の「構築」について
まんが原作者 大塚英志 インタビュー
聞き手・文:小笠原 健
90 なぜ人はSFに魅了されるのか
文:山本 友理
91 物語と社会批評
社会哲学者 稲葉振一郎 インタビュー
聞き手・文:鈴木 絵美里
92 ビデオゲームの虚構と現実
美学者 松永伸司 インタビュー
聞き手・文:高橋 ミレイ
93 映画におけるフィクションとリアリティ
映画監督 西川美和 インタビュー
聞き手・構成:黒柳 勝喜/文:小松 香里
94 ディズニーランドの虚構と現実
文:立花 陽菜
95 プロレスとは何だろうか?
文:常見 陽平/編集協力:三富 兜翔
96 衣服と人間の関係史
つくること、買うこと、借りること
文:小形 道正
97 建築における「ただならなさ」
文:大野 友資
98 アンリアルな風景
CG作品『Waiting for』から考える
文:原田 裕規
99 写真と現実の不一致
ぼんやりとした虚実・信じることの怠惰
構成:酒井 瑛作/文:村上 由鶴
100 ポップ・ミュージックの虚実
歴代のポップ・アイコンはどのようにつくられたか
文:照沼 健太
101 芸名の歴史とその特質
文:村山 佳奈女
102 空想する力と創造する力
発達心理学と脳科学から考える
文:笹川 ねこ
103 『消費社会の神話と構造』と現代の消費
記号学者 石田英敬 インタビュー
聞き手・構成:猪谷 誠一/文:猪谷 千香
104 消費のためのデザイン
文:佐藤 由香/協力:矢島 進二
105 広告に見る虚実
“MAD MEN”と“GOOD PERSONS”のあいだ
文:河尻 亨一
106 聖なるものづくり、聖なるブランディング
構成:福井 良應/文:杉本 恭子
107 なぜ人はものをつくるのか
認知考古学から見る古代の「もの」と「ものづくり」
文:西山 薫/協力:北川 一成