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丸く収まらないトンガリサークル白書 関東編|早稲田大学 怪獣同盟 (木原元編集長イチオシ記事 #6)

後列左から)カゲロウ、市川綾子さん、アーグネット、神谷健太朗くん、傀儡子ちゃん
前列左から)現代表の廿浦明日くん、ワセダブリュー、百均丸、前代表の遠藤彪太くん

百均丸、特撮モードに変身!

 早稲田大学の怪獣同盟は、戦隊ヒーローや怪獣など特撮モノが好きな人間が集まる大所帯の学生サークルだ。

 今回のデコチャリ探訪を飾る最後のサークルということもあり、取材に懸ける情熱も高まる一方だ。しかし、大概のケースとして、私が情熱を燃やすと、圧倒的なファウルゾーンに事態は進んでいく。「百均丸を解体してモビルスーツにしよう!」。私の特大ファウルボール的提案に、「もう好きにしてください」と、呆れを通り越して諦めの表情を浮かべるマスダ隊員と、製作作業に入る。

もう勝手にして。

「ここはガムテープで、テキトーに固定しましょう」と、情熱のカケラも感じさせないマスダ隊員の協力を得ながら、百均丸のトランスフォームは見事に完了した。

「戦闘能力ゼロって感じっす」。マスダ隊員の言葉は、きっと正しいのだろう。少しでも動けば崩壊してしまうので、身動きひとつ取れないのだから。

動けないね…。

 怪獣同盟のメンバーがやってくるまで体勢をキープせざるを得ない。しかも、被り物のせいで、視界はほとんど確保できない。ゴミ捨て場に置かれた産廃物になった気分だ。

 さらに「何か、さっきからカラスがキハラさんのことを狙っています」との報告。

地獄からお迎えに来ました! 

 カラスに狙われるという状況は、明らかに生命が危険に晒されている状況と言えるのではないか。

 私は“ヒーロー”の登場を心の底から願うのであった。

ついに登場!

「あ、来ましたよヒーロー!」。マスダ隊員が嬉しそうに叫ぶが、体勢を固定して、視界も奪われた私には確認することができない。

 でも、ヒーローが来てくれた。カラスに狙われている私にとって、これほど嬉しいことはない。

 カラスはどこかに飛び去っていったようだ。さっそく、怪獣同盟の活動についてインタビューすることにする。取材に応じてくれるのは、前会長の遠藤くんと、現会長の廿浦(つづうら)くんだ。

参上!

「怪獣同盟は、創設以来“特撮お祭りサークル”を名乗っています」。はっぴ姿の2人に違和感を覚えていたが、どうやら“お祭り”という言葉に何かしらの鍵があるようだ。「特撮を中心に、みんなでワイワイと盛り上がりながら楽しんでいきたい」という発言にあるように、演じることが好きな人、製作が好きな人、映画やショーを演出するのが好きな人、それぞれ違う嗜好を持つ人間が、お互いを刺激しあって「好きなこと」を体現している。「ひとつの方向性に絞らない」というサークルのスタンスは、創立から34年が経つ今も変わっていないという。「好きで好きでたまらない」という気持ちが、怪獣同盟を束ねるすべてなのだ。「世界平和が根底にあるので、ケンカもしません」とのこと。爪の垢を煎じて『広告』の編集部員に飲ませたい名言である。

特撮モノが好きで好きでたまらない。
「好き」の情熱が圧倒的クオリティを生み出す!

 キャラクターの企画から製作、映像やショーの構成と演出まで、メンバー同士で協力して自前でやっている。基本的に、代が替われば、先代がつくったキャラクターは引退し、新しい世代が新キャラクターを生み出していく。「先輩には負けられない」という情熱と切磋琢磨が、34年の歴史の中で、プロも顔負けのクオリティを実現させているのだ。

沈黙のジェスチャー対談。

 ヒーローにもインタビューをしてみようということで、怪獣同盟のスター的なキャラクターである“ワセダブリューさん”に話を伺ってみる。

 私のおぼろげな視界の先に、いろいろなジェスチャーをするワセダブリューさんが見えるが、いっこうに言葉を発してくれない。

 通常、衣装の中で演じる人と、声を当てる声優は別人なのだそうだ。すかさず、声優の役回りを多くこなしてきた遠藤くんがフォローを入れてくれる。

「衣装の中に入ると、振る舞いはヒーローになりきります。声優も、日頃は口にしないセリフを話します。自分では気が付かないパフォーマンスが引き出されて、元気が湧いてくるんです」とのこと。

「元気が欲しい時には、ヒーロー役を演じてみればいいかもしれないね」と私が言うと、「そうですね」と同意してくれる。ワセダブリューさんもジェスチャーを返してくれているようだ。そうか、ならばさっそく、ヒーローを演じてみようではないか。

 公園の隅の方で、2大ヒーロー夢の共演を行うことにする。すると、マスダ隊員が「ワセダブリューがコイツを成敗するっていうシーンで」と、謎のディレクションをしている。百均丸はヒーロー側だと思っていた私にとっては、青天の霹靂だ。悪役側なの!?


 廿浦くんのテキパキとした指示のもと、ワセダブリューと百均丸の決闘シーンの撮影が行われる。

 決着は1分もしないうちに着いた。基本的に上半身を上下左右30㎝くらいしか動かせない百均丸に、為す術など、最初からないのだ。

さらば! 百均丸。

闘いは終わった。

浜松から始まり、走行距離およそ200㎞、取材期間およそ1週間におよぶすべての戦いが終わった。最後の最後は、自らが百均丸を演じたわけであるが、遠藤くんが言うように、元気は湧いてこなかった。
「とにかく終わった」。ただその一言に尽きる。最後に学生のみんなが情熱を注いでつくったヒーローに成仏させられたのが、何よりの救いだ。
「百均丸、ここに死す」。産廃物のようになった私は、カラスの大群が押し寄せてきやしないか、ただそれだけが不安だった。 

怪獣同盟“現役”名キャラクター図鑑

流星戦士
ワセダブリュー

流星の如く現れたニューヒーロー。龍と人間のミュータントという設定。早稲田の「W」と「龍」をかけ合わせたネーミング。全身に施された龍をモチーフにしたデザインが特徴。腰に携えた「龍星剣」で悪をブッた切る。


酷爪の狂狼
カゲロウ

狼をモチーフにした怪人。名前は虫の「かげろう」に由来しており、形態変化が起こるのが特徴。肩や腕、腰のパーツをつけ替えることができる。形態変化が進むにつれ、どんどん虫の要素が濃くなってくる。


病みの忌婦人
傀儡子ちゃん

「くぐつこ」と読む。“ちゃん”をつけないと逆鱗に触れるので注意が必要。クマのぬいぐるみ「ベティちゃん」を抱えていて、ちょっとでも奪われそうになると猛烈に怒る。二重人格設定で、自分のご主人様である「ベティちゃん」を腹話術で喋らせる。


電磁危械
アーグネット

マグネット(磁石)に由来した名前で、磁力とそれによって発生する電力で戦う機械生命体。沢山の武器を持っており、武器同士を合体させさらに強力な攻撃を繰り出す。磁力を使って形態を変えられるのも特徴。写真は、通常形態の姿。

文:木原龍太郎 写真:中嶋久美子

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『広告』2018年 2月号 vol.409
特集「奇抜な情熱〜場外ファウルボールをかっとばせ!」

こちらよりご覧ください

※2018年1月19日発行 雑誌『広告』vol.409 特集「奇抜な情熱」より転載。記事内容はすべて発行当時のものです。


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