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47 なぜ日本はコンテンツビジネスが下手なのか

日本はコンテンツビジネスが強い国かと聞かれて、どう答えるだろうか?
アニメ、マンガ、ゲーム……多くの優れたコンテンツがあり、多様なマーケットが存在する日本は「コンテンツ大国」であるというイメージを持つ人も多いだろう。日本におけるコンテンツ市場は、約12兆円(総務省「平成30年版 情報通信白書」より)もの規模がある。しかし、2013年~2017年の5年間の市場の伸びを見ると日本は年率1.6%の微増にとどまっており、年率5.5%で伸びる世界主要国の市場成長から遅れをとっている。コンテンツ産業の規模を対GDP比で見てみると日本は1.6%。アメリカの2.5%、韓国の2.3%を下回り、「コンテンツ大国」とは言い難いのが現状である。

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図1-1:主要16カ国における5年間のコンテンツ市場規模推移(ヒューマンメディア「日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース」2019年を元に作成)

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図1-2:2017年の各国コンテンツ市場の対GDP比(ヒューマンメディア「日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース」2019年および世界銀行の統計データベースを元に作成)


コンテンツビジネスの特徴は、生み出された作品・著作物が、IP(知的財産)となり、様々なメディアや商品などへ展開され、物理的制約にとらわれずに、そのビジネスの規模を膨らませていく点にある。優れたコンテンツIPは海を越え、さらには時代を超えて、お金を生み出し続ける。
生み出されたコンテンツの価値を最大化するために、どのように種をまき、いかに育てていくか、その戦略性が問われる。インターネットやその後のモバイル普及を経て、コンテンツ産業はより多様で、よりグローバルで、スケーラブル(拡張性が高い)なビジネスとなった。近年はさらに、映像コンテンツ産業におけるNetflixや音楽産業におけるSpotifyなど、新しいプラットフォームの台頭によって、コンテンツ産業はますますグローバル競争が前提となり、より高い戦略性が求められる環境となってきた。

このような変化のなか、日本のコンテンツ産業は過去の経験則から外れる事態に向き合い、これまでのモデルを見直さざるを得ない状況に突入している。この状況を悲観的に捉えるのではなく、むしろ50年に一度の大チャンスとして考えたい。日本のコンテンツ産業がここから大きな勝負に出て、さらなる隆盛を迎えるための方法論を前向きに議論すべきだ。本稿の前半では、コンテンツの価値を最大化するという目標に対して、「構造上ネックになっているものは何か」を考察する。後半では「いかに上手くコンテンツIPを“育成”するか」という視点から、日本のコンテンツビジネスの勝ち筋がどこにあるかを考えていく。


責任分散と責任集中

まずは、アニメーション映画における日本とアメリカの違いを見ながら考察を始めたい。

図2-1は、それぞれディズニーと日本の製作委員会方式のアニメーション映画の製作から流通までのバリューチェーンの違いを示している。ディズニーは全バリューチェーンを垂直統合しており、先行投資となる製作領域から、利益を回収する配給やマーチャンダイジングまでの流通領域において、すべての意思決定を単一企業体によって行なうことができる。

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図2-1:アニメーション映画の場合の比較(みずほ銀行「みずほ産業調査 コンテンツ産業の展望」2014年を元に作成)


コンテンツビジネスにおけるつくり手(製作)と売り手(流通)の事業者の事業規模を比べると、売り手サイドのほうが規模が大きい(図2-2)。しかし、ディズニーなどアメリカのメディア・コングロマリット(※1)は、売り手サイドを統合し、かつ、つくり手を内製化していくことで、著作物に関する権利も一元化し、かつ、それをマネタイズするためのあらゆる手段を自社内で持っている。

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図2-2:つくり手と売り手(みずほ銀行「みずほ産業調査 コンテンツ産業の展望」2014年を元に作成)

日本では、形式的には製作委員会が全体をカバーしているが、内実はマルチステークホルダー(※2)となっており、各プレイヤーが各々の持ち場での資金回収を各自の責任で進めていく形となる。

製作委員会方式の是非については、各所で議論されているし、ここでそれ自体の是非を問うことには意味はない。不確実性が高いコンテンツビジネスにおいて“リスクをうまく分散させる”手法として編み出された仕組みである。しかし、リスクの分散が、責任の分散にまでつながってしまうパターンもあり、その場合は、“責任を徹底的に集中させる”アメリカとの対比が際立ってくる。ここでの問いは、責任集中型と責任分散型というスタンスの違いが、製作からマネタイズまでのバリューチェーンにおいてどんな影響を及ぼすかであり、そこからヒントを見出したい。ここでは3つの影響に着目する。

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