見出し画像

書店員さんの寺子屋的存在 「定有堂書店」

編集部員の全国書店開拓ノート20

販路開拓のために編集部員が訪れた全国の書店。直接お会いしてわかった店主のみなさまの本に対する思いやご当地の魅力を綴ります。

定有堂書店 @鳥取県鳥取市

汽水空港さんがある松崎駅から各駅停車で1時間少々。鳥取駅に降り立ち、8分ほど歩いたところに「定有堂書店」さんはあります。

お店に辿りつく前、私はとても緊張していました。

ご訪問にあたり、いつものようにメールでご案内をお送りしたあと、お店にお電話を。出られたのは店主の奈良さん。メールが届いていることを確認しつつ『広告』のご紹介をしていると、突然「1分経ったけれどよくわからなかったです。博報堂さんなら1分で説明しないと。いらないです」と、お電話がプツリと切れてしまいました。

……しばらく何が起こったのかわからなくて放心状態に。お断りされたんだ、仕方がないと諦めようかとも思ったのですが、いやいやお店の営業時間に電話をかけて、ゆっくり話を聞いてもらえると思っていたことが間違いだったな、でもせめて雑誌『広告』のことをきちんと説明したい、それでお断りされたら諦めようと、1分程度で話せるように手帳に内容をまとめ、再度お電話をかけました 。

奈良さんは2度目のお電話にもかかわらず話を聞いてくださり「内容はともかく熱意を感じたので、一度、直接お話を聞かせてください。何か発見があるかもしれません」と言ってくださいました。

画像1

そしてついにお店を訪問するときがやってきました。

まずはお店のドアを開けてご挨拶。そのまま近くのカフェで『広告』をご紹介することに。奈良さんがオーダーした、とても大きなガトーショコラを私も注文し、まずは自己紹介。

ご訪問の少し前にリニューアル創刊号をお送りしていて、それについては「うーむ、難解ですね」というお返事をくださりながらも、短い期間でほとんどのページを読んでくださっていました。リニューアル創刊号のときに起こったことや、それを踏まえて最新号ではどんなことをしようとしているかなどをご説明。最新号の記事見本なども読んでいただきながら、無事にお取り扱いが決まりました。

この日は私が『広告』のご案内をするだけではなく、奈良さんからもたくさんの本や考え方を教えていただきました。 

なかでも印象に残ったのが、奈良さんが2017年から発行されている“本のビオトープ”をテーマにした冊子「音信不通」。『広告』を扱っていただいている京都の「開風社 待賢ブックセンター」の鳥居さんや、地球探検家の方など、地方に住んでいる様々な職種の方が思いおもいの文章を寄稿されています。

「ビオトープ」とは、生物が生存できるようにつくられた生息空間のこと。中学生のときに授業でつくったビオトープには、土壌や環境を少し整えてあげるだけで、今まで見たことない昆虫がやってきたり植物が生えてきたり、いろんな発見があったことを思いだしながら、“本のビオトープ”というテーマにとても心惹かれました。

そしておもしろいのが、この「音信不通」は、惹かれる人にだけ見つかればいいと、あえて店内の目につきにくい場所に設置されているのだとか。

スクリーンショット 2020-05-14 19.03.20

奈良さんの元には、書店を開いてみたいという方が相談に来られることもあるそうです。奈良さんは、難しいと感じたらそれをはっきり伝えながらも見守り、応援なさっているというお話を聞きました。

私が最初にお電話をしたときも「わからない」とストレートに言われ最初は戸惑いましたが、最新号の発売時にはお店に手書きメッセージつきでディスプレイしてくださり、いち早く完売に。この定有堂書店が、書店員の聖地と呼ばれる意味がわかった気がしました。

ご訪問した日は、気づけばたっぷりとお時間をいただいてしまい、帰りの飛行機の時間が危うくなったので駅までちょっと走りました。心残りなのは、じっくりお店を見られなかったこと。これはまたリベンジ訪問するしかないな!

 探訪メモ

「とうふちくわ」
やはり地方にきたらご当地の名物を食したい!ということで手軽に食べられる「とうふちくわ」を購入してみました。名前のとおり、とうふとちくわの合いの子で、木綿とうふ7:魚のすり身3といった割合のものが多いそう。江戸時代に貴重だった魚よりも豆腐を食べるよう藩主に推奨されていた名残りなのだとか。丸かじりしてみると優しい味。鳥取県民のちくわの消費支出は全国1位というデータがある一方、かまぼこの消費量はその逆で最下位とも言われているのもなんだかおもしろい。
▶︎ 詳しくはこちら


文:『広告』編集部・大塚

定有堂書店
長崎出身の店長・奈良さんが奥様のご実家である鳥取市で1980年に創業 。奈良さん独自の目線でつくられたメッセージ性のある棚で、新しい本に出会えます。結論を出すことを目的としない人文書の読書会「読む会」は、30年以上続けられているそう。
▶︎ 詳しい情報はこちら

※状況に応じて一時休業または営業時間が変更になる場合があります。詳細はリンク先よりご確認ください。

他の開拓ノートを見る
『広告』最新号(特集:著作)発売のお知らせ


最後までお読みいただきありがとうございます。Twitterにて最新情報つぶやいてます。雑誌『広告』@kohkoku_jp