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木の香りが漂うセルフビルドの書店「汽水空港」

編集部員の全国書店開拓ノート19

販路開拓のために編集部員が訪れた全国の書店。直接お会いしてわかった店主のみなさまの本に対する思いやご当地の魅力を綴ります。

汽水空港 @鳥取県東伯郡

artos Book Store(アルトス ブックストア)さんがある松江駅から特急で1時間半。鳥取県にある「汽水空港」さんを訪問するため松崎駅へ。近くには鳥取県と中国河北省の友好のシンボルとして建てられた「燕趙園」(えんちょうえん)という日本最大の中国庭園があり、松江方面から向かう車窓から、その異国情緒漂う庭園を眺めることができます。

松崎駅の周辺は、東郷温泉と呼ばれる温泉地。駅の近くには、湯気がたちのぼる池のなかに鎮座する「湯の華慈母観音」などもあり、温泉地らしいムードが漂っています。

お店に向かう途中、ふと見ると道の向こうから走ってくる女性が。まだお会いしたことはないけれど、きっと汽水空港のモリアキナさんに違いないと思い「アキナさんですか?」とお声がけすると正解。開店の準備をされているところだったので、少し周辺を散策しながらオープン時間を待ちました。この日の空は厚い雲に覆われていたけれど、瞬間的にパッと青空が広がる不思議なお天気。雲の切れ間から差し込む光がなんとも神秘的でした。

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淡水と海水が入り混じった汽水湖「東郷池」のほとりにある汽水空港は、モリテツヤさん・アキナさんのご夫婦で運営されています。ご訪問した日はテツヤさんが出張で県外にいらっしゃったので、奥様のアキナさんにお話を聞いていただきました。

ご夫婦で自ら施工されたというセルフビルドの店内に入ると、木のいい香り。奥の大きなテーブルで『広告』最新号をご案内しました。アキナさんはとても聞き上手な方で、楽しそうに相槌を打ってくださるので、説明している私がなんだかわくわくしてしまいました。オリジナル本とコピー本を同時に発売することにも「おもしろそうな取り組み!」と興味を持っていただき、無事にお取り扱いいただけることに。

ご案内のあと、店内をじっくり見させていただきました。棚には、テーマに沿って新刊と古書がいっしょに並べられています。新刊は、ほんのり透けるグラシン紙に包まれているのが目印。建築関係の書籍や、様々なZINEなど幅広く取り扱っています。

お店の紹介文に“「世界に幅と揺らぎあれ」を指針に、畑、建築、焼き芋屋、様々な実践を伴いながらリアルとユートピアの汽水域を本日も飛行中”とあり、どういうことかなと思っていたのですが、古書でも新刊でも、どんなジャンルでも、自分らしく本を選べる書店ということなのかなと感じました。

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お店の裏にはギャラリーがあり、このときは「谷このみ」さんの個展が開かれていました。谷さんは、少し前に大阪・東住吉の書店「LVDB BOOKS」(エルブイディービー ブックス)さんにおすすめいただき作品集を購入してから気になっていた作家さん。個展は、カラフルで大胆な絵が上下左右、部屋いっぱいに展示されていて、なんだか元気がでるものでした。その後、アキナさんおすすめのZINEを購入し、お店をあとにしました。

松崎駅は電車が1時間に1、2本しか来ないので、ランチを食べていたら乗り遅れるかもしれないという不安を抱えつつ、アキナさんおすすめの駅前にある喫茶店「アスコット」さんへ。電車の時間が心配なことをお伝えすると「すぐにとりかかるよ!」と超特急でつくってくださり、いつもは常連さんが座っているという一番眺めがいい特等席に座り、おいしい生姜焼きをいただくことができました。書店さんに教えていただくお店はぐっとくるところが多くて嬉しいです。

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 汽水空港探訪メモ

『野崎が行く』
汽水空港さんへ入ってすぐに目に飛び込んできたZINE。作者の野崎卓也さんが旅した各地をイラストで紹介するもので全8巻。ミャンマーからはじまり、中国やインドなど様々な地方がテーマに。今回購入したのは大阪・京都・神戸・広島・鳥取・奈良を旅する西日本編で、汽水空港の店主モリテツヤさんも登場。場所の名前や感想とともに描かれるイラストになんだか癒されます。
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『ラクダを買ってひとり旅』
アキナさんにお店を案内していただいているときに「この本おもしろいんですよ」とご紹介いただいたのがこちら。タイトルのとおり、作者の浦林さんがインドでラクダを買って旅をする体験記なのですが、移動の電車のなかでむふむふ笑ってしまいました。本の綴じ方が麻紐なのもいい! ちなみに作者の浦林真大さんがZINEに出会ったのはここ汽水空港さんだそう。現在は「せかいのまんなか」というカレー屋さんを営まれています。
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文:『広告』編集部・大塚

汽水空港
2015年にオープンした、鳥取県の中央に位置する東郷湖のほとりにあるセルフビルドの書店。2016年の鳥取県中部地震の影響で一時閉店していましたが2018年にリニューアルオープン。書店だけではなく、建築や畑も同じくご夫婦で取り組まれています。オンラインストアで本を買うとおまけでオクラの種がついてくるそうです。
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※状況に応じて一時休業または営業時間が変更になる場合があります。詳細はリンク先よりご確認ください。

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