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本の旅へと誘ってくれる「春光堂書店」

編集部員の全国書店開拓ノート25

販路開拓のために編集部員が訪れた全国の書店。直接お会いしてわかった店主のみなさまの本に対する思いやご当地の魅力を綴ります。

春光堂書店 @山梨県甲府市

春光堂書店さんへお伺いするため、新宿駅から特急あずさに乗り山梨県甲府駅へ。甲府城の武器庫だったとも言われる山手御門(やまのてごもん)と富士山が同時に見えるスポットをとおり、15分ほど歩いた「甲府銀座通り」という商店街のなかにお店はあります。

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この日お会いする宮川さんは本当に書店にいらっしゃるだろうか、という不安がよぎります。というのも、とてもお忙しくほとんど不在にされている印象があったからです。

お店のリサーチをしていたとき、来店されたお客さまがブログなどで「アットホームなお店です」と書かれていたので、初めてのご連絡をする際も緊張することなくお電話を。電話には元気いっぱいの男性が対応してくださいました。新しい雑誌についてお話をしたいとお伝えすると、今は店長さんが不在とのこと。翌日もかけるもご不在、その翌日も、その翌日も……少ししつこいかなと思いながらも、かけてみること5日目。ついに4代目社長でもある店長の宮川さんとお電話がつながりました。雑誌『広告』の概要を説明すると興味を持っていただき、お店に訪問して詳しいご案内をすることになりました。

当日、お店に入ると宮川さんがあたたかく迎えてくださいました。いつもご不在だったのは教科書の販売や取引先への納品で飛び回っていらっしゃったそう(お忙しい時期に何度もごめんなさい)。雑誌『広告』のご案内をすると「近くにある大型書店さんに品揃えでは敵わないけれど、ベストセラーだけではない、おもしろいラインナップを心がけてお店をつくっているから、ぜひ置いてみたい」とお取り扱いを決めてくださいました。

宮川さんとお話するなかで出てきた1冊『デパートを発明した夫婦』(鹿島茂、講談社、1991年)をきっかけに、関連のある本を次々と教えていただきながら店内を一周しました。まるでガイド役の宮川さんといっしょに店内を旅しているようなわくわく感! お客さまはこうやって宮川さんと会話しながら本を選ばれることも多いそう。

店内の本棚は『風の谷のナウシカ』のすぐ横に料理本、八ヶ岳など山の本のすぐ上にはデザインの本と、ジャンルごとに区切られておらず、知らずしらずのうちに今まで触れたことのない本と目が合います。桜座というライブハウスも近く(私が訪問した数日前にも祭り系ビッグバンド『渋さ知らずオーケストラ』がライブを!)県外のお客様も来店されるため、少しでも地元のことを知ってもらおうと、山梨県に関連する本を意識してラインナップされているそう。

そろそろお暇しようかなと思っていたところ、お客様が本を探しに来られました。「NHKで料理番組を見ていたら、レシピが気になってテキストを買いきたのよ」と年配の女性(90歳を超えていらっしゃるそう)が嬉しそうに宮川さんとお話をしている姿を見て、地元の方にもなくてはならない書店さんなんだなと感じました。

電車に乗る前にご当地グルメを食べて帰ろうと宮川さんに名物をお伺いすると、50年以上続くいなり寿司やさん『いなり寿司 清水屋』と、山梨はワインでしょう! ということで、気軽においしいワインが飲めるという『フォーハーツカフェ』を教えていただきました。

いざ!と行ってみると、いなり寿司は売り切れ、カフェは定休日……。駅前の居酒屋で甲府名物「鳥もつ煮」をつまんで特急かいじに乗りました。

春光堂書店 探訪メモ

『オリンピック通り 』
「このあたりを散策するならぜひ行ってみるといいですよ」と宮川さんに教えていただいたのが、1964年の東京オリンピック開催にちなんで名前がつけられた路地裏の飲食店街「オリンピック通り」。いざ現地を覗いてみると、レトロカラーの看板の奥に提灯がいくつか見え、ちょっと昭和を感じます。今では貴重な「たにし」が食べられるお店もあるのだとか。昔、川でよく獲ったけど食べられるなんて知らなかったな。

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『垈』という文字 
この「垈」(ぬた)という文字は甲州でしか使われない漢字なんだそう。湿地帯や沼を表すこの漢字、確かに今まで見たことがない。日本全国には言葉と同じようにその地域でしか使われない「方言漢字」なるものがあるのだとか。漢字の由来が不明なのになぜだかJIS漢字コードの登録には入っていて、不思議とパソコンなどで変換できてしまう漢字を「幽霊漢字」と呼び、この垈もそのひとつだそうです。ほかにどんな漢字があるのか探ってみようと思います。


文:『広告』編集部・大塚

春光堂書店
1918年に「春日町(旧住所)から知識の光を発信していく」をコンセプトに山梨県甲府市にオープン。幹事を持ち回りで変えながら開催する読書会には、様々な年齢、職業の方が参加され毎回とても盛り上がるそう。宮川さんの丁寧な説明に惹かれ、山梨県出身で小児病棟などで出張プラネタリウムを行っておられる高橋真理子さんが書かれた『星空を届けたい 出張プラネタリウムはじめました!』(ほるぷ出版、2018年)を購入しました。
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