#2 新しさ
世の中には、新しくない「新しさ」が溢れている。
たとえば、家電量販店にずらりと並んだ新商品。よくよく見ると少しだけ見た目が変わっていたり、ボタンがひとつ増えていたり。でも、誰もそのボタンを使わないとすれば、その「新しさ」に何の意味があるのでしょうか。世の中には「新しさ」という名のニッチな差別化や、本質的ではない微細なアップデートが蔓延しているように思えてなりません。
そうは言うものの、つくり手としても、受け手としても、「新しさ」に惹かれている自分がいます。
世界最大と言われるデザインの祭典「ミラノサローネ」では、毎年何千もの「新作」の家具が発表されています。正直、家具ならイケアや無印良品で充分じゃないかと思ったりもします。でも、何千もの新作のなかには、この世に生まれてきてよかったと思えるものも確かに存在するのです。そして僕自身もそうしたものを生み出したいと、毎年ミラノで新作を発表し続けています。
「新しさ」とひとくくりに言っても、先述したような意味の薄い「新しさ」もあれば、時代を大きく変革する「新しさ」もあります。誰も見たことのない刺激的な「新しさ」もあれば、いまという時代に寄り添うささやかな「新しさ」もあります。
この章では、これ以上新しいものなんて必要ないと感じることも多いこの時代に、「価値ある新しさ」とは何なのかを問い直していきたいと思います。(小野直紀)
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この記事は2019年7月24日に発売された雑誌『広告』リニューアル創刊号から転載しています。
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