33_現代の千利休

33 現代の千利休 〜 価値観を更新するものづくり

舶来の華美な器がよしとされていた時代に、「わびさび」という美意識とともに歪みのある素朴な器に価値を見いだした千利休。いまの時代に、こうした価値観を更新する現象は起こりうるのだろうか。

本誌編集長の小野直紀が、デザイン・イノベーション・ファームTakramのビジネスデザイナー・佐々木康裕氏と元「Forbes JAPAN」編集次長でAnyProjects共同創業者の九法崇雄氏を迎え、価値観を更新するものづくりのあり方について鼎談を行なった。


これからの価値観の更新は分散型で起こる

九法:今回の『広告』の最後を締めくくる企画のテーマを、なぜ千利休にしたんですか?

小野:ものの価値って、人や社会によって決まっていくものですよね。人や社会の価値観がガラッと変わると、ものの価値のとらえ方もガラッと変わる。そうした価値観の更新とセットでものづくりに向き合っていくことも重要なのではと考えていて、そのときに最初に思い浮かんだのが千利休でした。

九法:なるほど。千利休のような存在って、ほかに思いつきますか?

小野:無印良品ですね。無印は、ものそのものよりもイメージにお金を払う “高級ブランド志向”と、徹底した大量生産を背景とした “安物志向”、このふたつの極端な消費のあり方に疑問を投げかけた。もののつくられ方や届け方を徹底的に見直し、ちょうどいいものを、ちょうどいい価格で提供しました。

九法:千利休も無印も、それぞれの時代に対するアンチテーゼになっています。

小野:そうですね。千利休の時代は「華美な器がいい」という価値観、無印の時代は「高いか安いか」という両極端の価値観があって、みんなが同じ方向を向いていたからこそ、それに対してアンチテーゼを打ち出すことで価値観の更新を起こせた。でも、いまは多様性の時代で、みんながあちこち違う方向を向いているから、何に対してアンチテーゼを打ち出せばいいかわからない。

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佐々木:
そもそも、いまのベースにある共通の価値観って何かあるのでしょうか?

九法:さかのぼると、経済学者のミルトン・フリードマンが『資本主義と自由』でうたった、「資本主義下の自由競争により社会が豊かになる」という成長を前提とした価値観があると思います。それだけじゃなくて、楽しいものや美しいものにも価値があるといったように、分散化された価値観がポツポツと出てきているのがいまなのかなと感じています。

佐々木:「分散」というのはひとつのキーワードですね。僕もこれからの価値観の更新は分散的に起こると考えています。大規模ではなく小規模に起こっていく。それは小学校1年生を担任する教師にとってだけ価値があることかもしれないし、生後1カ月の赤ちゃんがいる母親だけに価値があることかもしれません。小さいからダメではなくて、小さいからこそコミュニティ内においてはすごく価値を持つ。

小野:小さなコミュニティが増えることで、小さなカリスマも大勢誕生しますよね。たとえば、編集者の服部みれいさんは「冷えとり」のライフスタイルを提唱しています。ここでブームとなった「冷えとり」とは、靴下2枚ばきやレギンスの重ね着で体が冷えないようにするというファッション観です。

一般的に言えば、ちょっとダサい印象がありますが、彼女が重視しているのは見た目の部分ではなくて精神性の部分。自分を着飾るのを美しいとするのではなく、自分に心地いいことを美しいとするファッションのあり方を提示しています。ただ、これに関しては、僕にはあまり響かないんですね。

九法:それはどうして?

小野:僕自身がそもそも「着飾る美しさ」や「冷え」みたいなことにそこまで意識がないので、ポカンとしてしまうんですよ。そういう自分には関係ない領域で価値観が更新される現象があちこちで起こっている。それが分散型ということだと思うのですが、自分が興味関心のある領域しか問題意識を持てない。分散化された領域はどれも社会や人間にかかわるものだから、本来は有機的につながっているはずなのに、どこか分断されている印象があります。

佐々木:分散化された領域の間にどうつなぎ目をつくっていくか。以前ならこんな問題に頭を悩ます必要もありませんでした。昔は「人生すごろく」が画一的で、社会全体で大きな欲望の対象となる領域は学歴、家、車などと限られていた。だけど分散型の社会ではこの要素が無限にあるんでしょうね。

小野:そうですね。学歴、家、車といった領域が無限に増えていると同時に、家というひとつの領域のなかにも、庭付きなのか、デザイナーズなのか、高層階なのかと多様な価値観がある。いまは価値観のカンブリア紀みたいな感じになっていますよね。

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積層する3つの価値要素とインターネットという伝播の源泉

九法:多様な価値観のなかでも、社会的な意義を発信する企業やプロダクトが目を引くように思います。とくにD2C(Direct To Consumer)(※1)のスタートアップなんかは顕著です。思想的なメッセージを強めて生活者に訴求する。

佐々木:D2Cはそうですね。それで言えば、生活者にとっての価値の要素は、大きく4つあると思うんです。

小野:4つとは?

佐々木:「機能的価値」「関係的価値」「社会的価値」「インターネット的価値」です。ちょっと説明が必要なのでホワイトボードに書きますね(下図参照)。最初の3つは図の左側のように積層になっていて、その右横にインターネットの存在があります。

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まず図の一番下にある「機能的価値」は、パソコンのメモリなどのスペック部分、あるいは食べ物を長持ちさせるための冷蔵庫の機能などのことを言います。のどが渇いたから水を飲む、それで気持ちいいという「生理的価値」もここに含まれます。

機能的価値の特徴は上限があること。水は無尽蔵には飲めないですし、パソコンもノートとデスクトップがひとり1台ずつあれば充分ですよね。ここは土台となる価値ですが、比較的すぐに満たされるので生活者は次の価値へと移っていきます。

それが下から2番目の「関係的価値」です。他者との関係性のなかで初めて意味を持つ部分なので僕はそう呼んでいます。フェラーリで誰もいない砂漠を走っても燃費が悪くて不便だけど、フェラーリでガールフレンドを迎えに行くならば「ステータス」という記号になりますよね。思想家のジャン・ボードリヤールの言う「人間は記号を消費している」という言葉そのものです。関係的価値によって「見栄の消費」をしているとも言えます。

機能的価値と違って上限はないので、高級車を何台も所有したり、ブランドの靴を何十足も所有する人がいるのです。「インスタ映え」や「鎌倉に住む」などライフスタイルの選択にも、関係的価値の存在が見逃せません。

小野:関係的価値は、もともと広告会社がつくってきた領域ですね。その上にある「社会的価値」はどういう流れで出てきたのですか?

佐々木:関係的価値により大量消費が進んだ1950年代、深刻な環境破壊が問題視されるようになりました。その後しばらく経って’90年代になると、ヨーロッパで「環境にいいものがいい」という「グリーンコンシュマーリズム」(※2)や「エシカル消費」(※3)という言葉が出てきた。これがいまの社会的価値につながっています。

プリウス、フェアトレードコーヒー、アメリカのファーマーズマーケットなどが出てきたのも同じ流れです。逆に、エシカルが前提にあるからこそ、それに反した行動をする企業は大きな批判を浴びることになります。たとえば、ナイキが委託していた東南アジアの工場での児童労働が発覚した際には猛烈なバッシングがありました。

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九法:図のなかで、3つの価値すべてに接する「インターネット」はどういった位置づけなんですか?

佐々木:いまの時代に価値を語る上でインターネットの存在は避けてとおれません。図の左側にある3つの積層にレバレッジを利かせる要素と考えればイメージしやすいでしょう。これまで話してきたように、3つの積層については、企業が中心になってつくり、発信してきました。ところがインターネットによって価値のつくり手や発信が企業だけでなく個人にも移ってきた。

インスタグラマーもそうだし、こんまり(近藤麻理恵)のようにひとりで発信を続け、結果的にユニコーン企業と言われるまでになる人も出てくるとか、個人でも企業を上回るようなことが起こってきている。D2Cの台頭も、インターネットで生活者とダイレクトにやりとりすることで中間コストを下げて、「高額で手を出しづらい」という社会的価値の弱点をクリアしている点が重要な役割を果たしています。

九法:千利休が秀吉の権力と、無印がセゾングループの資本力と結びついて広がったように、価値観の更新を語る上ではそれを伝播する力が欠かせません。いまはインターネットがその伝播の源泉になっています。

小野:いらなくなった感じですよね、巨大な権力や資本が。だからこそ小規模な価値観の更新が分散型で起こっている。具体的に、どんなD2Cがあるのですか?

佐々木:わかりやすいのが、ニューヨーク発のアイウェアブランドのワービー・パーカー(Warby Parker)です。まず機能的価値として、普通のブランドなら400~500ドルする眼鏡を95ドルで提供しています。ターゲットにはニューヨークのブルックリンに住むクリエイティブ層を置いているから、そのように周りから見られたい人の消費も促していて、関係的価値にもなります。社会的価値の部分では、眼鏡を買うと発展途上国に寄付されるというプログラムが組まれています。さらに販売チャネルはEC、マーケティングはSNSを中心に行なっている。

要は3つの価値の要素にインターネットを掛けあわせた新しい価値モデルになっているんです。最近では、製造も自社でやっているワービー・パーカーのような企業は、D2CよりもDNVB(Digitally Native Vertical Brand)(※4)と呼ばれるようになってきました。

DNVBのアパレルで言うと、サンフランシスコ発のエバーレーン(EVERLANE)もワービー・パーカーと同じ構造をしています。これまでのアパレル企業のアンチテーゼ的存在だと自負していて、製造過程、原価をすべて公開しつつ、環境負荷の少ないものづくりをしています。

それでいながら、ほかのブランドなら300ドルくらいするニットが50ドルくらいで買えます。DNVBに共通するのは、質の高いものを安く買えて、それを所有することで新時代のブランドを愛している自分、といった価値が手に入るということ。

そう考えると、こうした価値の積層化された時代に、千利休のようなひとりのカリスマだけで価値観を更新させるのは難しい。局所的に小規模な変化があちこちで起こることはあっても、大規模な価値観の更新は起こりえないでしょう。だからもし現代の千利休がいるとすれば、それは個人ではなくチームなのかもしれません。

九法:僕も同じようなことを思っていて、価値や思想を持った人たちが緩やかにつながって連合をつくることが増えると見ています。今後は社会や環境に配慮した企業に与えられる認証であるB-Corp (ビーコープ)(※5)のような、緩やかな価値観の共同体が社会に対して影響力を持っていくはず。いまもすでに、パタゴニアやキックスターターなど世界で2,600社以上がB-Corpの認証を得ています。

小野:なるほど、B-Corpのようなあり方もあるのですね。僕は、分散的に生まれた小規模な新しい価値観たちが統合していくのは難しいのかと思っていました。でも、それは単にばらばらに見えていただけで、線引き次第では、ひとつの共同体として大きな価値観の更新を起こす存在になりうる。社会的価値の層は、そうやって顕在化していったとも言えますね。

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次なる価値の要素は「無用」や「遊び」

小野:個人的には社会的価値の次なる価値の要素が何なのかというのも気になります。

九法:それなんですが、僕は「無用」や「遊び」の価値が高まっていくんじゃないかと思っています。AIをはじめとするテクノロジーが労働力の大半を担うようになっていくとしたら、人間はどんどんヒマになっていくはずだから。僕が驚いたのは、今回の『広告』でも「無用」というテーマを設けていること。

小野:僕は無用を起点にものづくりや価値観を考えていけるとすごくいいなと思っていて。先日もちょうど「自生するデザイン」と題して、課題解決を前提としないデザインの展覧会をやりました。

九法:なんで「自生するデザイン」にたどり着いたんですか?

小野:基本、デザインは受託で始まるじゃないですか。だから課題を解決するためのあり方としてデザインが語られることが多いけど、「そもそもデザインって何だっけ?」とモヤモヤすることが多かった。

それで受託ではない自発的なデザインのあり方は何だろうと考えていくと、課題解決を「用」としたとき、それ以外の「無用」の部分にこそ価値があるんじゃないかと思ったんです。もともと「自生するデザイン」と名づける前は「無用のデザイン」と呼んでいました。そういうものの価値が認められていくといいと思うし、そういうものが排除された世の中はすごく嫌だなと感じます。

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九法:
いまはすべてが“目的的”な世の中ですよね。小野さんの考える無用ってどんなことですか?

小野:ひとつは、いらないと思っていた石ころが、アイデアと結びついて有用性が生まれるみたいなこと。石斧だって、そうやって生まれた的な。要は「いまは無用」ってこと。もうひとつは何をやっても本当に使えない石ころです。

佐々木:後者の本当に使えないものは僕もすごく重要だと思います。求められる機能性、関係性や社会性は時代の影響を受けるから移り変わりが早い。だけど、無用ならばその影響を受けないポジションを取れるから、寿命が長くなる。

小野:そうですね。現に千利休の時代の器も、いままた価値が上がっている。無用とは言いきれませんが、少なくとも機能的価値からは外れていますから。

佐々木:意味がないことに一番価値がある。

小野:なんだかロボット掃除機の「ルンバ」ってかわいいじゃないですか。そう感じてしまうのは人間の生理ではあるけど、そのかわいさは意図してつくられたものではない。段差にぶつかってひっくり返って動けなくなるとか、どこかで止まっちゃってるとか、機能的には明らかに失敗していて無用ですよね。でもそれがかわいいという情緒的な価値になっているのです。

佐々木:さっきの図の要素には、かわいいを引き起こすものはなさそうですよね。

小野:かわいい、きれい、という情緒的な感情は、人間にもともと備わっているもの。それなのに佐々木さんが世の中を分析して描いた図に入っていないのは、置き去りにされているからなのかもしれない。いまの世の中にも無用は絶対にあるものだから、重要視されていないんだなとは感じます。

合理化、効率化、イノベーションもいいけど、みんながそこに向かっている感じが気持ち悪い。そうじゃない人もいないといけない。無用というものが次の層に積み上がっていくのか、分散的に一部の人の興味関心としてあるのかはわかりませんが。

九法:無用なのにうまくいっているものって何かありますか?

小野:うーん……。宗教的なものとかですかね。お札とかお守りとか。先ほど話した、「冷えとり」とか、千利休や無印にも宗教的なものを感じたりもします。「こんまり」もしかりです。

佐々木:宗教的とは、経典のほか、たとえば日曜日の礼拝という儀式、十字を切るポーズ、十字架というオブジェクトなどを内包していることですよね。それを聞いて、ニューヨーク発のペロトン(Peloton)を思い出しました。D2C並みに注目している“SaaS Plus a Box”(※6)分野のエアロバイクをつくるブランドです。

1台25万円くらいでエアロバイクを販売していて、月額4,000円ほどでカリスマインストラクターのオンラインエクササイズを受講できるサービスをセットで提供しています。会員は50万人ほどいて、顧客満足度を示すNPSスコアは全米企業のなかで2位。そして解約率はたった1%程度。エアロバイクブランドがですよ?

ペロトンは宗教のフォーマットを活用して大規模なカルト的コミュニティをつくり上げました。アメリカではいま、教会に通う人は少なくなり、スポーツジムに通う人が多くなっている。教会に行くようにスポーツジムに行き、牧師の代わりにインストラクターがいる。そこにエクササイズを受講する大衆が存在している。エクササイズは、宗教でいう教会の儀式のように50分ほどのプログラムで組まれています。

大衆は共通のオブジェクトである十字架を持つのではなく、タンクトップなどのスポーツウェアを身に纏い、結束を固める。このフォーマットをインターネット空間でやることで無限に膨らませることに成功しました。

九法:科学が発達していなかった時代は、自分の健康を教会や神社仏閣で祈願していた。その場所がいまはスポーツジムに変わりましたが、その行為自体は宗教的とも言える。新しい時代のビジネスモデルらしいですね。

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資本主義からはみだした価値観の更新は起こりうるのか

小野:いま話してきたなかで千利休以外は、資本主義をベースにしていますよね。一方で、本当に使えない石ころのような「無用」は、資本主義からは、はみだしている。そうした無用さってどうやったら成立するのでしょうか。千利休のような価値観の更新は、資本主義の構造に乗っかっていると生まれるとは思えません。

佐々木:問題は資本主義からはみだすときも、お金がかかるということですね。

小野:そうなんです。無用をやり続けるためには、そのための持続可能なシステムをつくっていかなければならない。世の中に影響力を及ぼすには時間がかかるから。

九法:オルタナティブなものは、社会に寛容性がないと育てていけない。その点、日本は、お茶にしろ、絵画にしろ、建築にしろ、余白の文化がある。新しい価値観が受け入れられやすい土壌があるとは思います。

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佐々木:
雑誌「WIRED」創刊編集長のケヴィン・ケリーは、ブログで「1,000人の忠実なファン(1,000 True Fans)」をつくることの重要性を説いています。ビジネスやものづくりで成功するためには、ダイレクトにつながったファンが一定数いるかどうか。D2Cの企業がいま脚光を浴びているのも、これを実践できているからです。

会社の枠組みを外れ、無用や遊びを生み出そうとする個人にもこの考え方は応用できます。千利休にしても「七哲」という7人の弟子、つまりファン、フォロワーがいました。実際に千利休の世界観は彼が亡くなったあとに、弟子たちが広めていきました。キリスト教も同じ構造でイエスの死後に「使徒」という12人の弟子たちによって広まっていきました。価値観の更新には往々にしてディストリビューターが存在しているのです。

小野:令和になって発売された「人生ゲーム」も象徴的で、かつてのお金を増やすというものから、インフルエンサーを目指してフォロワーを集めていくことが目的になっています。資本主義がフォロワーに代わっただけじゃないかという違和感もありますが。

九法:いまは「成長=善」とする資本主義の末期だと思うんですよ。いまより便利に、人より上にと追い求めてきたけど、そのこと自体に無理があって世界に歪みが起こった。歴史は一直線にあるものではない。そこに何か価値観の更新を起こすヒントがある気がします。

小野:“進歩史観”(※7)に対する疑いですね。

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九法:
文化人類学者のクロード・レヴィ=ストロースも50年ほど前に、その進歩史観を真っ向から否定しました。あらゆる社会には普遍的な構造がもともと備わっているから、時間が経つにつれて経済がよくなるのはおかしい、と。

経済学者の宇沢弘文氏も資本主義の不安定さを指摘しています。彼はシカゴ大学で教鞭を執っていたのですが、ベトナム戦争のときに日本に帰国すると深刻な公害を目の当たりにした。それで経済成長を前提にすること自体が違うと、自身の理論を根本から再構築して、いまのソーシャルムーブメントの源流になった社会的共通資本という概念を提唱しました。

佐々木:ベトナム戦争でアメリカは社会的に大きな傷を負いました。その反動で「ウッドストック」に代表される音楽フェスティバル、ジャック・ケルアックなどのビート文学といった、いまでも語り継がれるカウンターカルチャーが豊富に育った。

歴史的に見ると、動乱後には新しい文化の更新が起こりやすい。千利休にしても、本能寺の変ののちに秀吉に仕えて茶の湯を完成させたわけです。21世紀で言えば、2017年のトランプ政権誕生は、歴史の転換点とも言える衝撃的な出来事でした。動乱後と呼べるいまは、新しくておもしろいもの、価値観を更新するための状況が出そろってきているんじゃないでしょうか。

九法:価値観の更新が既存の価値観へのアンチテーゼだとすると、アンチテーゼが既存の価値観になった時点でダサくなる可能性もあります。それに資本主義の前提が変わったらオルタナティブや無用の概念さえ再定義する必要があるかもしれない。だから、価値を更新してあり続けるのならば、伊勢神宮の式年遷宮のように20年ごとに自己破壊を繰り返すしかないのかもしれません。


構成:谷口 陽/文:土屋 亘

佐々木 康裕 (ささき やすひろ)
Takramディレクター/ビジネスデザイナー。1982年、埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。イリノイ工科大学Institute of Design修士課程(Master of Design Method)修了。総合商社、経済産業省を経て、2014年より現職。多様な業界のコンサルティングのほか、ビジネス×カルチャーのメディア「Lobsterr」を運営。
九法 崇雄 (くのり たかお)
AnyProjects Co-Founder/パートナー。1979年、鹿児島県生まれ。一橋大学商学部卒業。NTTコミュニケーションズを経て、2004年プレジデント社入社。2014年より副編集長。2017年アトミックスメディア(現リンクタイズ)入社。「Forbes JAPAN」 編集次長兼WEB編集長。2019年3月より現職。未来の価値創出プロジェクトに携わる。
脚注
※1 D2C(Direct To Consumer)……商品を仲介業者や実店舗を介さず、ECサイトで直接ユーザーに販売するビジネスモデル。
※2 グリーンコンシュマーリズム……地球環境問題に高い関心を持ち、環境負荷の少ない商品の購入や利用を呼びかけ、リサイクルに参加する運動、または生活者。
※3 エシカル消費……環境や社会に配慮した製品やサービスを選んで消費すること。
※4 DNVB(Digitally Native Vertical Brand)……D2Cのうち、製品の企画まで手がける垂直統合型のビジネスモデル。
※5 B-Corp……米国ペンシルバニア州の非営利団体「B Lab」がつくった企業の認証制度。環境・社会に配慮した事業を行ない一定の基準を満たす企業に与えられる。
※6 SaaS Plus a Box……サブスクリプション型ビジネスともの売り型ビジネスを組み合わせることで、費用回収までのスピードを高め、将来の高い収益性を実現するビジネスモデル。
※7 進歩史観……人間社会が最終形態に向け過去から現在まで一直線に進歩してきたとする歴史観。

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この記事は2019年7月24日に発売された雑誌『広告』リニューアル創刊号から転載しています。

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