見出し画像

本を独り占めできる「今時書店」

編集部員の全国書店開拓ノート28

販路開拓のために編集部員が訪れた全国の書店。直接お会いしてわかった店主のみなさまの本に対する思いやご当地の魅力を綴ります。

今時書店 @新潟県新潟市

著作特集号の販路開拓をしていたころ、新潟県に無人書店という新たなスタイルでお店を営まれている書店があるという情報を耳にしました。詳しく調べてみると、お店のオーナーはなんと高校3年生(現在はご卒業されています)! ぜひ一度お話を聞いてみようとさっそくメールでご連絡をしたのが今時書店さんです。

オーナーの平さんの返信は、高校生と思えないほど、とてもていねいな文面。『広告』にも興味を持っていただけたので、新潟へ伺うことに。日程を調整するなかで、平さんから「卒業式」や「登校日」という久しぶりに聞くワードが出てきたので、なんだか懐かしい気持ちになりました。

学校に影響のない日にお約束し、当日は平さんとお店の前で合流。さっそくお店のなかへ。全面ガラス張りのドアを開けると、奥行きがある店内にゆったりと本棚が配置されています。奥のテーブルでまずはお店のシステムについてお聞きしました。

お客さんとしてお店に入るには、事前に無料のメンバー登録をしてIDを発行。鍵がかかったドアの入り口でIDを入力するとなかへ入ることができます。欲しい本が見つかれば、セルフレジで決済を。クレジットカードや交通系ICカード、PayPayなどで支払いをする仕組みになっています。無人書店なので書店員さんはいません。誰の視線も気にせずに、ゆっくり本を選ぶことができます。

今時書店1

今時書店さんでは、ひとつの本棚にひとりのブックオーナーがいてそれぞれ選書を担当しているそう。古書店を営んでいる方や、関西在住の本好きな方など現在は7人のブックオーナーがいて、ビジネス書だったり、絵本や洋書だったりと棚ごとの世界を感じることができます。『広告』のご案内をすると、新しいですね! と何度も相槌を打ちながら熱心に聞いてくださり、著作特集号はブックオーナーの選書としてではなく、今時書店で初となる平さんの選書として扱っていただけることになりました。

なぜ高校生の平さんがオーナーとなり無人の書店を始められたのか、ずっと気になっていたのでお伺いしてみました。もともと平さんのご家族の持ち物だったビルの一部に空きが出るタイミングがあり、それぞれ仕事や学校があるなかで、人を雇わず何かできないか家族会議で話し合った結果、この仕組みを使った書店を開くことになったそうです。

今時書店があるエリアはいわゆるビジネス街。立地的にお客さんは仕事帰りのビジネスマンやキャッシュレス決済に慣れている20、30代の方が多いのかなと予想していたのですが、もっと上の年齢層の方も多いとのことで驚きました。そして、信濃川をはさんだ駅側は若い人がお店をオープンするなど新しい文化が生まれているエリアでもあるのだとか。

お会いしたときは高校生だった平さん。この年代の方とお話する機会がほとんどないので、イマドキの高校生ってどんなだろう? と学校生活についていくつか質問を。部活のことをお伺いすると、中学時代はアーチェリーの日本代表だったそう! 競技で使用する道具のことなど、豆知識を教えていただきメモメモ。高校を卒業されてからのことについては「進学や就職ではなく、新潟の文化を発信するために、ここでいろいろとチャレンジしたい」とお話をしてくださいました。

冷たい雨だったこの日、帰り道は寒すぎて携帯を操作する指がかじかんでいました。そんなとき目に入ったのが創業1968年の山浦珈琲店 本店。ハンドドリップでオリジナルブレンドを淹れていただき、ほっとひと息。指が生き返りました。

ステンドグラスに赤いソファ、ムーディな雰囲気の店内を眺めていると「どちらから来られたの?」とママさんが声をかけてくれました。会話は広がり、今時書店さんの帰りだとお伝えすると、新聞で読んで気になっていたけれど、お店に入るのが難しそうでまだ行けていないとのこと。先ほど平さんに教わったとおり入店方法をお伝えすると「今度行ってみようかしら」と嬉しいお言葉。ママさんは今時書店に入ることできたかな。

今時書店3

今時書店 探訪メモ

上越新幹線「E4系 Maxとき」
今回新潟県へ向かうのに利用したのが2階建て新幹線「E4系 Maxとき」。16両編成時には、高速列車のなかで世界最大の1,634人の乗客を運ぶことができます(ちなみに東海道新幹線「のぞみ」は16両編成で最大1,323人)。新しい車両との入れ替えなどの理由で2020年の引退が決まっていましたが、昨年の台風19号などの事情もあり、しばらくは運行されるそう。日本で唯一の2階建て新幹線からは、ほかの列車とはまた違った車窓を楽しむことができます。車両の引退までにもう一度乗車したいな。

画像3



文:『広告』編集部・大塚

今時書店 
2019年10月、新潟県新潟市に無人書店としてオープン。複数の個性的なブックオーナーが本棚ごとにそれぞれ選書した本や、ZINE、リトルプレスが並びます。今後はイベントなども企画していきたい、と話すオーナー平さんの好物はフライドポテトだそう。
▶︎ 詳しい情報はこちら

※状況に応じて一時休業または営業時間が変更になる場合があります。詳細はリンク先よりご確認ください

他の開拓ノートを見る
『広告』最新号(特集:著作)発売のお知らせ


最後までお読みいただきありがとうございます。Twitterにて最新情報つぶやいてます。雑誌『広告』@kohkoku_jp